第165話
「火よ!」
ホーミングでミノタウロスを追いかける火魔法。
精度は向こうのホーミングと比べて段違いだが、向こうもホーミングしてくるというのが問題だ。
厄介さを解っているのだ。
そのため、奴はホーミングする火魔法に自分の火魔法をぶつけてきた。
威力で言えばこちらのほうが圧倒的だが、魔法と魔法が激突するタイミングで拮抗が発生する。
そこで回避してしまえば、火魔法はミノタウロスに追いつけない。
「ああもう、なんであんなすばしっこいんだよ!」
「AGIにバフ回してるからな、油断するなよナフ、いつ向こうが仕掛けてくるか解らん」
「もちろんっ!」
手斧を拾い直して、ナフは防御の構えを取っている。
向こうもそれを解っているから、迂闊には攻めてこないだろうが――それも時間の問題。
あいつは、俺が牽制で火魔法を使ってばかりで、踏み込んでこないことを時期に察するだろう。
「――――!!」
「ぴぇ! き、来ましたぁ!」
「ヒーシャ、下がって! ツムラさんも!」
ナフが前に出て、それを迎え撃つ。
正面からの打ち合いはやはりナフが不利だ。
しかも、俺の火魔法を奴は捌きながらナフと打ち合っている。
それ込で、向こうが若干優勢。
近接戦闘の練度は化け物だな。
「――――!」
魔法の打ち合いは流石にこちらが優勢だ。
このまま続けていけば、近いうちにミノタウロスを魔法が掠めるだろう。
それで終わりだ。
今の俺は、揺り籠で防御ステの大半を攻撃ステにまわしている。
ナフでそれを守り、魔法をミノタウロスに当てる作戦だ。
――が。
「――!!」
「……まずいっ!」
ミノタウロスが、何かを察したのか大斧を振りかぶる。
隙だらけな動作だが、魔法が当たるタイミングではない。
「下がれナフ!」
「くっ!」
俺の言葉を聞くよりも早く、ナフが後ろに下がっていた。
直後、ミノタウロスは斧を振り下ろし――
地面を割った。
「す、砂埃で前が見えませんっ!」
「ふたりとも、動かないで!」
ヒーシャとナフがそれぞれ叫び、直後。
ミノタウロスが粉塵を突き破って俺に殴りかかってくる。
が、流石に遅い。
「もうDEFは元に戻ってるんだよ!」
拳で斧を受け止める。
流石に、来るとわかっていればそこまでビビることはない。
だが、反撃に拳を振るおうとしたら、即座に距離を取られた。
『魔法で仕留める作戦は失敗だ!』
『うう、残念です』
『でも、まだまだ行けるよ』
こういう時、言葉を交わさず相談できる揺り籠は便利だ。
向こうにこちらの意図は気取られていない。
故に、
『ああ、相手の底は見えた、次で仕留めるぞ』
俺達は勝利のために、次なる手を打つ。
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