第164話
俺は、今まで自分が出せる最高速で戦闘したことがない。
なにせ早すぎるのだ。
車に乗っていたりしたらともかく、人の身で直接あの速度に対応するのは一朝一夕の練習では無理。
ある程度、本格的な練習が必要になるだろう。
だから、今は特に練習に本腰を入れていないんだが――
それはそれとして、その速度を戦闘に組み込まないのは惜しい。
結果、考案したのがこの最高速最大火力パンチ。
ようは、動きが単純であればあるほど、その制御は容易い。
もっとも単純な動きは、直線を突っ走ること。
これのいいところは、速度が火力に補正を与えること。
ダメージは、ATKがDEFを超えた数字に、攻撃方法による補正で算出される。
速度も、そこに関わってくるわけだ。
練習の際は、あの邪ノシシを一撃で屠った俺達の連携技なわけだが――
「さすがに、中ボスを一撃は無理か」
『多分、後もう一発』
「解った、慎重にもう一発行こう」
俺達の練習台こと邪ノシシは一撃でも、ミノタウロスはそうは行かない。
大きく吹き飛んだミノタウロスは、壁に激突しながらも態勢を立て直して復帰した。
全然どうじてねぇなぁ、あいつ。
「ツムラさん、大丈夫?」
「問題ない、防御ステもすぐに戻したしな」
「き、気を付けていきましょう!」
それぞれ言葉を交わし合う俺達。
ヒーシャも、どこか興奮気味だ。
連携が見事決まって、嬉しいんだろう。
「――――!!!」
対して、ミノタウロスは咆哮と共に火の玉を生み出した。
再びこちらへ突っ込んでくるか?
ナフはすでに集束を使っている、そうするのが自然な行動だ。
だが、
ミノタウロスは、俺達を中心に円を描くように行動し始めた。
「行動パターンが変わった!?」
「ぴえ!? 聞いたことないですよぉ、そんなの!」
こっちを警戒して、慎重策を選んだんだろう。
死弐鰐も俺の攻撃を警戒して、そういう行動を取った。
ある程度知能がある魔物ならそれは、別におかしな行動ではないんだろうが。
「それだけ、俺達の行動が奴を警戒させたわけだ。ちょっと厄介だが、効いてるのは間違いないぞ」
火の玉を炎で撃ち落としながら言う。
ここはもともとの相談通り、ナフが物理攻撃、俺が魔法を受け持つ。
さて、少し面倒になった。
死弐鰐は斬華で対処したが、高速で動き回る相手を斬華で対処しようとするとヒーシャとナフの存在が問題になる。
制御の効くシーン攻撃ではないからな、斬華の炎剣。
後、俺は剣の練習をしてないので、基本斬華は雑にブッパできる場所でしか使いたくない。
とはいえ、いくら高速で動き回ってこちらを撹乱しているとはいえ、基礎スペックでは俺達が優位だ。
ここは……腰を据えて戦うことにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます