第166話
結論から言えば、戦闘は終始俺達優勢で進んでいる。
向こうの攻撃はこちらの想像を越えてこない。
俺達とあいつの戦力差を覆す隠し玉はミノタウロスにはない。
中層ボスなんだから、その程度なのは当然だが。
それはそれとして、相手のスペックは間違いなく高かった。
俺達が向こうより強くとも、向こうが一定以上に強ければ追い詰めるのには時間がかかる。
ここまでの戦闘は、そういう戦闘だ。
「よし、頼むぞヒーシャ」
「はい! ツムラさんに中級支援魔法を!」
めずらしく、ヒーシャが支援魔法を途中で切らずに使用する。
理由は単純、リキャストが入る前に倒してしまえばいいからだ。
「さ、追いかけっこだぞ、ミノタウロス!」
俺はミノタウロスに宣言し、接近する。
最高速――ただし、治癒魔法バフ未使用――で突っ込めば、俺はミノタウロスの速度に追いつくことができる。
言葉通りの、追走劇が始まる。
『頑張ってください、ツムラさん!』
『こっちはいつでもいいから!』
ヒーシャの声援と、ナフの呼びかけ。
それを受けながら追いかける。
速度ではこっちが勝っているはずなのに、追いつけない。
火魔法同士のぶつかりあいで進路が制限されているのと、俺が速度バフを活かしきれていないからだ。
練習はしている。
だが、未だに安定して最高速で戦うことはできない。
しかし、ミノタウロスにしても厄介だろう。
追いつけてはいないが、突き放せてもいない。
そもそも広いとは言え屋内での追走は、用意に逃げる側に追いかける側が追いつく。
であればミノタウロスは考えるだろう。
この状況を打破するには、俺以外をどうにかすべきだ、と。
ここまでの戦闘で、最も警戒すべきは俺だと認識しているがために。
油断したままそう考える。
それこそが、狙いだったと気が付かず。
『ナフ、そっち行く』
『解ってる!』
クロが呼びかけた直後、ナフにミノタウロスは突っ込んだ。
最善手はヒーシャ狙いなのだが、ナフの集束は効いているので、ナフを狙うほうが自然だ。
それを待っていたナフは、斧を大斧に持ち替えている。
そして、
「
油断した相手に、一番有効なのはカウンター。
もっと言えば、虚を突く攻撃だ。
ミノタウロスはその斧を正面から打ち破ろうとした。
裁断によって、エンチャントによて強化されているなど、思っても見ないまま。
「――――!!」
正面から、斧同士のぶつかり合いを制したナフが、ミノタウロスを吹き飛ばした。
俺は、吹き飛ばされた場所ですでに待機している。
もはや詰みは明白。
吹き飛ばされたまま、こちらに振り向くことすらできないミノタウロスは、再び限界まで強化された俺の拳を受けて――消滅した。
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