第162話

「ついたね」

「う、うん」

「気をつけていこう」


 三人と、揺り籠の中の一人がダンジョンの中に降り立つ。

 ここは中層と下層の間。

 中ボスの間とでも呼ぶべき場所だ。

 一般的に、ボス部屋は他の階層と独立しているが、階層には含まれない。

 つまり中層の最深部は十層で、下層の一階層目は十一階層だ。

 まぁ、どうでもいいっちゃいい話だけど。


 とにかく、そんな階層として扱われない場所だからか、中ボスの間は非常に簡素な作りをしている。

 四角い大部屋だ。

 ここでパワーレベリングをすれば効率がいいだろうな。

 まぁ、一度ボスを倒してしまえば二度と入れないし、ここで魔物は湧かないんだが。

 おのれ……


 他に特徴があるとすれば、中ボスの間にはパーティ単位でしか入場できない。

 もし2パーティが同時に中ボスの間へ入ったとしたら、別々の空間に飛ばされる。

 大ボスの場合は、そもそもダンジョンに大ボスの間は一つしかないので、一度誰かが入ったらその誰かが出てくるまで他のパーティは入れなくなるんだが。


『……来る』


 敵意を察知できるクロが、一番早く変化に気がつく。

 直後、俺達の眼の前に魔物が現れる。

 魔物がポップする時、光を帯びて一瞬その場に浮遊して出現する。

 その後、着地すると光が収まるわけだが、光っている間の魔物は攻撃できない。

 ちなみに、これと同じ現象は人間にも起こる。

 転移魔法陣で別階層に転移した時だ。


 つまり、魔物っていうのは転移魔法陣を使ってこの世界にといえる。

 これはダンジョンの外の魔物にも言えることなのだが――詳しく語っていると、長くなるので割愛。


 今は、眼の前の魔物だ。


「……牛型魔物だ」

「えーっと、たしか名前は――」


 ――そして、ある意味俺は。

 を今、相手にしていた。



「ミノタウロス」



 牛型の魔物。

 筋骨隆々な二足歩行の牛の魔物。

 容姿は、そう言えばオタクならすぐに想像がつくだろう。


 ミノタウロスだ。

 概ね、パブリックイメージの。


「――――!!!!」


 咆哮。

 光が収まって出現したミノタウロスが、俺達を威嚇するために叫んでいる。

 手には大斧。

 ナフの背中にあるそれよりも、更に大きい。


「お、おお……すごい」

「ナフ、解ってると思うけど正面から打ち合うなよ」

「ぐっ……解ってるよ」


 ナフ?

 釘を差して正解だったな。

 ともかく。


「ここを攻略すれば、次は下層だ。もともと、。普通にやれば勝てる相手だ。油断せず行こう」

「は、はひ!」

「うん!」


 さぁ、戦闘開始だ。

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