第158話
鰐が面白いものをドロップした。
「鱗だ」
『鱗』
「素材に使えそうだな」
こんどドワーフ工房に持ち込んでみよう。
それはそれとして……
「ヒーシャとナフからの通信がないな」
『どうしたんだろう、おーい』
『え、あ、ひゃいー!』
っと、無事のようだ。
クロの死弐鰐に関する説明は向こうにも聞こえていたはずだが、何の反応もなかったので心配していたのだ。
これまでは、大物の解説をクロがしていると、何かしら反応があったのに。
『ちょ、ちょ、ちょっとまってくらさいね、こっちも今落ち着くところですのでー!』
『っし、終わったよ』
どうやら向こうもなにかあったらしい。
これまで、クロの会話に向こうからの反応がなかった時はたいてい――
『……こっちは大変だったんだから、ツムラさん』
『ってことは、まさか……』
『そ、そのまさかですぅ、こっちにも出たんですよ……死弐鰐』
やっぱりか。
って死弐鰐!?
こんなクソ魔物、一度に二体も出てくるなんてそうそうあるか?
『ツムラさんは、結構さっくり倒したみたいだけど』
『まぁ、さっくりは倒せたけど、あいつのヤバさは流石にわかる』
どう考えても俺に迫るAGIで飛び回るATK120の化け物とか、普通に相手していい魔物じゃないだろ。
流石に今となっては、そうそう俺が負ける相手でもない。
だがこの街に来た当初だと、ダイヤモンドオーガみたいな千日手になりかねないぞ。
そう考えると、結構強くなってるな。
『ちなみに、どうやって倒したんだ?』
『いやー、色々あったんだけど』
そもそも、ナフとヒーシャは死弐鰐に追われてる別パーティの救援で戦闘に入ったらしい。
俺に助けを求めようにも、聞こえてくるのはクロが死弐鰐の特性を解説する声。
腹をくくって二人で戦闘に挑んだわけだが……
『わ、鰐さん早すぎてぇ、ナッちゃん手数全然足りなかったんです……』
『こっちのAGI全然足りてないからね……後ろにはヒーシャと逃げてきた冒険者がいるから、タゲ取るのに必死だし』
序盤はかなり押されていたようだ。
バフに関しては、すでに逃げてきた冒険者パーティが使わせていたらしい。
バフを使わせるのも結構大変なはずだが、中々やるな。
虎の尾を踏んだともいうが。
『ただ、ヒーシャの光魔法で作った盾が、向こうの攻撃を一瞬だけ止めるのに有効だって理解ってからは、大分安定したね』
『アレを有効だって言えるのは、ナッちゃんだけだよぉ』
バトルジャンキーのケがあるナフのことだ、戦闘自体はかなり楽しかっただろう。
一瞬の隙が勝敗を分ける攻防は、かなりナフ好みのはずだ。
だからこそ、有効手にも気付けた、と。
余裕ができれば、冒険者パーティを逃がす余裕も生まれる。
足手まといがいなくなれば、そこからは二人のターンだ。
『
『他の冒険者さんには、あんまり見せたくないですからね』
特殊な才能ってのは、隠さないと面倒になるもんだ。
集束のような特殊技は、基本他の冒険者には見せないほうがいいとレベッカさんにも言われている。
『んで、最終的には死弐鰐も問題なく討伐できた……と』
『すごい、アレは下層でも厄介な方』
『私としては、下層だと死弐鰐が厄介レベルで済むって方が、衝撃なんだけど……』
ともあれ、話は終わりだ。
それぞれ三階層を抜けて、中層攻略は進む。
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