第152話

「いや、ホントあそこまで褒められるとは思わなかったよ」

「あ、ああいうのはツムラさんの専売特許だと思ってました……」

「ヒーシャは俺を何だと思ってるんだ?」


 冒険者達から離れ、未だに恥ずかしそうな二人。

 案外、ヒーシャよりナフの方が恥ずかしそうなのは気のせいだろうか。

 もしかしたら、ヒーシャが普段から恥ずかしがっているので、あまり変化を感じないだけかも知れないが。


「レベル40になったら、二人は否応なく一流冒険者として見られるようになる。そうしたら、視線なんて今の比じゃないぞ」

「うう、わかってるけど……」


 とはいえ、今はまだなれる必要のあるものではない。

 いずれ、必要になった時。

 それに準じた度胸というものが求められる。

 そう考えると、ナフは本当に今、この状況に慣れていないのだ。


「じゃ、じゃあえっと……相談した通りに、で、いいんです、よね?」

「ああ、基本は二人の連携に俺が加わって……」


 と、ヒーシャが何とか気を取り直して提案し、俺がそれに応えた時だった。


『敵襲、魔物が襲ってくる』


 クロが、風雲急を告げる。

 即座に俺達は戦闘態勢に入る。


『二方向から来る。このままだと囲まれる』

『マジか』

『どうする?』


 双方向の魔物に連携されると面倒だな。


『二手に別れよう。俺があっちを、二人で反対の奴を』

『は、はい!』


 それぞれを別個で叩くことにした。

 うなずいた二人を見てから、俺は指さした方向に飛び出す。


 現れたのは、牛型の魔物だった。

 身体の半分くらいの大きさを誇るでかい角が特徴的だ。


『バトルホーン』

『ATKは……52か、邪ノシシ並か?』

『だいたい、そんな感じ』


 MAGは13しかない。


『にしても、魔物のATKは見た目より低いな』

『人が高すぎる。ただ、HPは魔物の方が圧倒的に高い』


 邪ノシシですら、五桁くらいHPありそうだものな。

 とにかく、まずはこいつをなんとかして、二人に合流しよう。


『揺り籠を使うぞ』


 ATKが理解っている相手に、遠慮は不要。

 揺り籠の効果で攻撃ステータスを一気に300オーバーまで引き上げる。


「火よ」


 中級火魔法を起動する。

 ホーミング機能をつけた白熱の針。

 放つと同時に走り出し、追撃の拳を叩き込む。


「ぶもおおおっ!!」


 バトルホーンは正面から突っ込んできた。

 そのまま白熱の針に貫かれ、更には拳を受けて倒れる。

 うむ、相手の動きが単純なのもあるが、弱いな。


『こっちは終わったぞ、いまから応援に行く』


 と、揺り籠を使って念話で伝えると。


『あ、こっちも終わったから大丈夫だよ』


 ――と、ナフから返ってきた。

 早くない?

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