第147話

 俺達三人は首を傾げていた。

 エンチャント中級、初めて聞くスキルだった。


『珍しい、エンチャント中級だ』

『知ってるのか、クロ』

『レアスキルじゃないけど、なかなか取得する条件を満たせないスキル』


 条件。

 条件といったか。


『知っての通り、スキルは本人の素質で取得するスキルが決まる』

『そうだな。それを条件って言ってるわけか』

『そう。そのうえで、エンチャント中級は、珍しい素質が必要』


 その上で、エンチャント中級の効果説明文をナフが押してくれた。

 こんな感じらしい。


『エンチャント:中級』

 種別:支援魔法

 効果:己が内なる魔力を、武器に支援魔法として付与することができる。武器を鍛造する際に使用することで、永続的に効果をアップすることもできる。


『ポイントは、武器を鍛造する時に使えること』

『つまり……どういうことだ?』

「――――は?」


 思わず、声が漏れてしまった。

 ナフも、ヒーシャも驚いた様子でクロが入ったペンダントを見る。


『エンチャントスキルは、鍛冶にも使える便利スキル。普通、武器を強化するだけなら武器強化スキルになる。種別は、強化スキル』

『頑強みたいな感じか』

『そう』


 他人に使えない強化スキルが『種別:強化』であり、他人に使える強化は『種別:支援魔法』になる、と。

 そして、エンチャントは鍛造に使えるから後者……なんだが。


『エンチャントは、鍛冶スキルを取得してると、取得できない』

『そりゃまた』


 曰く、エンチャントスキルによる武器強化の効果は、『武器強化:中級』と比べて効果が低いらしい。

 総合的に見ると、初級鍛冶スキルと、中級武器強化を同時に取得したほうがコスパはいいし、普通の人間ならエンチャントを取得できるならそういう成長ルートになるのだとか。


「そっか……鍛冶スキルも含まれてるんだ」

『こういうスキルは、かなり稀。レアスキルより数が少ないかも』


 どこか、嬉しそうにナフは言う。


「正直、やるなら冒険者だろうって、心のなかでは思ってた。なんだかんだ、ヒーシャと冒険するのは楽しいんだよ」

「ナッちゃん……」

「今ならそこに、ツムラさんやクロもいる。私、凄い恵まれてるよね」

「そうだな」


 あの時。

 邪ノシシをヒーシャと二人で圧倒する様子は、とても楽しそうに見えた。


「でも、そっか……って選択肢もあるんだ」


 安堵とともに、そう言葉にして。

 ナフの方向性は、定まった。


 しかし、そうなると気になるのは――どうしてナフは、鍛冶スキルを取得んだろうな?

 そこは、未だに理解らずじまいだ。

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