第145話

 それから、完成した集束レッドサイトの、練習と仕様確認はしばらく続いた。

 相手は当然、森の中でいくらでも収穫できるゴブリンである。

 一山5EXPは流石に安すぎだが、貰えないよりはマシだ。


 わかったことはいくつかある。

 まず、集束レッドサイトは効果が強すぎて何もしてないのに魔物が湧いてきてしまうこと。

 通常時であれば少し多いかな? くらいだが、モンスターハウス中にしようすると相乗効果で凄いことになる。

 なので、基本的に常用はできない。

 必要に応じて効果を適応するという形に落ち着く。


 とはいえこれは、短所だけではない。

 魔物の出現数が増えれば、それだけパワーレベリングの効率が上がる。

 何より、複数の魔物に群がられることは、いくらゴブリンでも結構な脅威だ。

 練習相手の質が上がったというのも、悪くはない。


 次にステータスアップの仕様について。

 一度にアップできるステータスは一つだけ、上がるステータスは初級で30、中級で45。

 中級で使う意味はあまりない。

 魔物の出現が更に加速するので、リスクの方が大きい。

 とはいえもしもの時はこの+15の差は結構大きいだろう。

 そして、上げれるステータスは任意に変更できる。

 俺が揺り籠を使った時のように、意識すると別のステータスアップ効果に変更される。

 目まぐるしく変更していくことになるので、なれるのは大変だろうが、極めれば全ステータス+30と同義だ。

 頑張って欲しい。


「にしても、アレだね」

「どうした、ナフ」

集束レッドサイトを使った時の魔物って、なんか普段と雰囲気変わるね」


 いいながら、迫りくる無数のゴブリンを手斧でナフは吹き飛ばしている。

 はたから見ていて、割とおっかない光景だった。

 少しでもミスれば、群がられて身動きが取れなくなる。

 これが強力なモンスターだったら……と思うとゾッとする。


 ある程度許容したとはいえ、相変わらず俺は人型魔物との戦闘が苦手なんだ。

 こんなふうに、群がる魔物を相手するタンクスタイルは、どう考えても俺には無茶である。


「一発一発の必死さが、ぜんぜん違う。攻撃の威力とかは変わんないのに、鋭さは段違いだ」

「ATKは変わってないからな。しかし、鋭さか」


 技術的な話だろう。

 魔物に攻撃の技術なんて概念はほぼない。

 強い魔物になると、知能が高くなってくるが。ダイヤモンドオーガとか。

 だから、技術的というか、本能的というか、そういう部分が鋭くなる。

 火事場の馬鹿力ってやつだな、多分。


「なら、ステータスは上がっても、やっぱり戦いやすさは前のほうがよかったか?」

? むしろ、この方がいいって私は思う」

「その心は」


 俺の言葉に、ナフは斧攻撃スキルを起動して、ゴブリンを吹き飛ばしながら応えた。



「こっちの方が、楽しい!」



 ああ、なるほどバトルジャンキー。

 ナフの度胸がどこから来ているか、ほんの少し垣間見えた気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る