第143話
「
最終的に、冒険者活動とは何だったのかというやり取りで一日を潰した翌々日。
ナフの口からそう告げられた。
何故か敬語で。
「ぴえ、決まっちゃった」
驚くヒーシャが、ちらりとこちらを見る。
伺うような視線。
一方的に決定してしまったからだろう。
だが、
「なるほど、いいな」
「いいんですかぁ」
ホッと胸をなでおろすヒーシャ。
「折衷案だからな。……考えたのは店主か?」
「うん、オヤジってば一昨日の夜にこの話してから、仕事中ずっと考えてたんだって。私は心が死にかけてたのに……!」
よくあるやつだ。
とはいえ、間に誰かが入ってくれて決めてくれるなら、それが一番だ。
「とりあえず……今後は、自分の技名は自分で決めることにしよう」
「そうだね……」
友情こそ深まったが、結局俺達は一日を無駄にしてしまった。
クロなんか、最終的に揺り籠にもどって寝てしまったからな。
ヒーシャはずっとおろおろしてたし、悪いことをした。
「とりあえず、技名が決まったら今度は早速実戦だ」
「おー」
「お、おー」
早速、俺達は森にやってきていた。
もはやお馴染みの場所である。
森の中だから人がやってこない、ある程度開けていて自由に動ける、端の方に切り株があって休憩もできる。
結構いい場所を見つけたんだ。
「じゃあ行くよー」
「おう」
というわけで、その中央に立ったナフが宣言する。
手斧を両手に握りしめ、片方を前に突き出し、もう片方を自然体で握っている。
なんとなく、カッコいいポーズだ。
「
その言葉とともに、ナフの身体が赤く輝く。
明らかに、これまでのヘイトスキルより、光が強い。
つまり、
「成功だ」
おー、とヒーシャがこぼす。
ナフもなんとなく興奮した様子で、光る自分の体を見下ろしている。
「……で、具体的にどうなったんだ?」
「ゴブリンを呼び寄せて試してみよう」
というわけで、ヒーシャにゴブリンを呼び出してもらう。
もはや一種の召喚術師だな。
召喚した魔物に言うことは聞かせられないけど。
ともあれ。
さっそくいつも通りゴブリンが湧いてきたわけだが――
「……数、多くないですか?」
「ああ、なんか多いな」
いつもより多かった。
そして、それらが一斉に――ナフへ向かって走っていく!
「う、うわあ!? なんなのこの数!」
「な、ナッちゃーん!!」
叫ぶナフに、慌ててヒーシャが防御バフを飛ばして、俺も突っ込んでいく。
いや、アレはマジでやばいって。
何体いるんだよこいつら!
『合計五十一』
『そんなに』
五十越えるのかよ、やべぇ。
と、思いながらも相手は所詮ゴブリン、しばらくすると殲滅することができた。
正直、焦った。
だが、
「いや、凄いなコレ……効果やばくない?」
群がられたナフはといえば、そんな感じでケロッとしていた。
やっぱり、ナフの度胸は本物だな。
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