第141話
魔力は光として可視化されている。
消費したMPに応じて、光も強くなる。
俺が治癒魔法のバフを中級で試した時から、その事は理解っていた。
だから逆算するのだ。
消費MPを多くしたから光が強くなるのではない。
光を強くしたから、消費MPが多くなるのだ、と。
「それ、どう考えてもヘイトスキルの範疇越えてない?」
「越えてるが、あらゆるスキルで共通して起きる現象でもある。ヘイトスキルでそれができれば、他のスキルでも同じことができるぞ」
とにかく、実際にコレができれば応用の効く技術だ。
なんなら頑強スキルでも、魔法スキルと同じ処理にはならないかもしれない。
「……具体的に、どうやれば?」
「こう、がーっとやってびゅーって感じ……?」
……多分そんな感じ。
ヒーシャの説明はともかく、コレばっかりはやってみるしかない。
俺が非魔法系スキルを覚えていない以上、完全にナフの感覚でやってもらうしかないんだから。
「光れ、って念じながらスキル?」
「まぁ、とりあえずそうしてみるよ」
クロの提案通りに、スキルを発動してみるナフ。
――何も起こらなかった。
「あれ? 発動すらしない」
「ん、光らせることに意識が行き過ぎてる。やっぱり」
どうやら最初から、クロは結果が想像できていたようだ。
とはいえ、コレ事態は面白い結果である。
雑念が交じるとスキルの効果すら発動しなくなる。
普段何気なく、手足のように使っているスキルすら、だ。
「逆に言えば、別のことを意識すればスキルは発動しなくなる程度に影響を受けるってことだ」
「つまり?」
「イメージが大事、これに尽きる」
「って言われてもなぁ」
難しそうに空を仰ぐナフ。
つられて見上げると、陽の光が目に突き刺さる。
もうすぐお昼だ。
この練習も、そろそろ切り上げるべきだろうか。
にしても、光ね。
光にも、色々と種類がある。
天から降り注ぐ太陽の光、炎が紡ぎ出す熱源の光。
スキルによって発光する魔力の色は様々だ。
それらは、どれも似ているようで、少し違う。
だから――
「……そうだ。光に名前をつけてみるってのはどうだ?」
「え? え?」
ようするに、その光に名前をつけることで、存在としての認識を明確にする。
ただ光を強くしようと思うからだめなのだ。
強くする光はコレだと、明確な意識がないと。
「それに、こうすれば普通のヘイトスキルとの使い分けにもなる」
「……! そ、それってさ!」
どうやら、ナフはピンと来たようだ。
そして、彼女はこの名前をつけることの意味……いや、“意義”を理解してくれるらしい。
「ヒッサツワザじゃん! 愛子がよく使うっていう、かっこいいアレ!」
そう、スキルを使うときに名前を口にする。
それは技名を口にするようなもの。
この世界にも、それはヒッサツワザとして伝わっている――!
使おうぜ、ヒッサツワザ。
かっこよく技名を叫ぶんだ!
「……男って、これだから」
「ぴえ、ナッちゃんは女の子ですよう」
なお、何故かクロからは不評だった。
なぜだ……
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