第139話

 ようは、これもイメージの問題だ。

 魔法は詠唱によって効果を一定にし、誰でも発動できるようになっている。

 それを非魔法系スキルにも使ってみようというわけ。


 これが純粋な攻撃スキル――斧攻撃とかだとそううまく行かないだろうが、頑強スキルは本質的にバフスキルと何ら変わらない。

 他人に使えない、魔法ではないというだけで。

 使い方のイメージは、正直魔法と変わらないのだ。


「えーっと、それじゃあ失礼して」


 こほん。

 ナフは俺から文章の書かれたメモを受け取って、それを読み上げようとする。

 ……が。


「……どうした?」

「あの……ごめんツムラさん」


 ……もしかして、俺の字が汚かったか?

 いやまぁ、そこは目を瞑ってもらうとして……


「……これ、なんて読むの?」

「oh...」


 そっちかぁ。

 ちなみにこの世界の文字は、割と法則が日本語に近い。

 愛子が開発した文字なのか……?


「ツムラ、不親切」

「悪いって、読み手のこと考えてなさすぎた」


 責めるクロ。

 だが、ナフはどちらかというと申し訳無さそうだ。

 学のある無しっていうのは、この世界だと明確に別れる。

 ない側の人間からしたら、自分たちのほうが申し訳なくなるのも理解らなくはない。


「いや、こっちこそすまない」

「だ、大丈夫だよナッちゃん! アタシも読めないから!」

「……一緒に勉強しよう、ヒーシャ」

「ぴええ」


 なんか、ヒーシャがぴえぴえ鳴くのが癖になっている気がする。

 まぁ、そこら辺は置いといて。

 ナフが読めないところにふりがなを振って、改めて。


「こほん」


 ナフが詠唱を開始する。

 たどたどしく読み上げるナフに、ヒーシャがハラハラしている珍しい光景を他所に。


「頑強!」


 最後に、スキルを起動するための文言をナフが口にして――ナフが光った。

 魔力は光を伴うことが多いんだが、光の強さは普通に頑強を使った時よりも強い。

 さて結果はどうだろう。


「えーっと……ステータスオープン」


 改めて、自分のステータスを確認するナフ。

 ちなみに、横目で覗くことはできない。

 プライバシー保護は完璧だ。


「あ、効果が+20になってる。凄いな」

「やったね、ナッちゃん」

「おー」


 どうやら成功したようだ。

 しかし、ひとしきり皆で喜んでいると――


「……あ、効果が解けた。普通の頑強スキルより早いな」

「えーっと、どれくらいだ?」

「……初級支援魔法と、同じですね」


 俺の質問に、横からヒーシャ。

 さすが感覚派、体内時計は完璧だ。

 しかし、つまりこれは……


「頑強スキルが、防御バフに限定されるかわりに効果の高い支援魔法になった?」


 非魔法系スキルを魔法スキルとして使用すると、魔法スキルのような効果になる。

 なかなかおもしろい発見だった。

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