第137話

「へ、ヘイトスキルをアレンジ、アレンジかぁ……」

「まぁ、魔法のアレンジよりピンとこないよな。日常的にしてることなんだから」

「そうだね、非魔法系のスキルって、使い手次第なところが多いから」


 つまり、元々ヘイトスキルに限らないが、魔法系じゃない戦闘用スキルってのはある程度使用者のイメージで使いやすいように変化していくものだ。

 だから、今更アレンジしようといっても、ピンとこないだろう。

 すでにスキルはナフの使いやすいように変化しているんだから。


 とはいえ、ヘイト上昇を“リスク”と捉える使い方はしていないはずだ。

 本人の反応的にも。


「じゃあ、普段ナフはどういう使い方をしてる?」

「えーっと、中級は全体の魔物をある程度こっちに注目させるのに使って、初級で特定の魔物を自分に釘付けにするようにしてる」

「中級を範囲、初級をターゲッティングに使ってるってことか、妥当だな」


 これは、主に本で読んだ知識だが、挑発スキルを使うのにはコツが居る。

 というのも、のだ。

 ある程度うまく挑発スキルを使えないと、初級があれば中級はいらない、なんてことになりかねない。

 『挑発:初級』はタンク必須の神スキルだが、『挑発:中級』以上はハズレ、なんて言説もあるくらいに。


 ナフの場合は、使うスキルで対象を変えているようだ。

 効果の強い中級は雑に全体に使い、初級で細かい調整をする。

 これの利点は言うまでもなく、とっさに使って事故が少ないというところだな。


「っていうか、コレ以上の使い方って正直あんまり思いつかないよ」

「正直、使い方としては一番分かり易い使い方だとは思う」


 だから、俺の使い方はそもそも今の使い方の上位互換ではない。

 ただ、だからといって使い方を完全に変えるものではない。

 完全に変えてしまっては、ナフがそれに適応するのが難しくなるからだ。


「うーん、じゃあ具体的にどうするっていうのさ」

「あ、アタシもちょっと解らないです……」


 お手上げの様子な二人。

 おそらく、クロならばある程度推測できるのだろうけど。


「……正気?」

「クロがそういう反応をするのか……」

「ぴえ……」


 脅かすんじゃない、クロ。


「まぁ、やることは単純だよ。ヘイトスキルの効果に使うMPを増やす」

「……増やす?」

「そう。スキルって、魔法系も、非魔法系もスキルにMPを使うことには変わりない」


 だから、やることは簡単だ。


「理論上、非魔法系スキルも中級ならMPは10まで使えるはずだ。だから、使えるようにする」

「……え、えっと? どういうこと? ナッちゃん」

「…………正気?」


 ピンと来ていない魔法使いヒーシャ。

 そして、正気を疑うクロとナフ。

 反応は、キレイに二分していた。

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