第136話

 俺が変態云々に関して、色々問いただしたいことはあるんだが、やぶ蛇になりそうだから置いておく。

 なんならヒーシャとナフが全力で首肯しているから味方がいない。

 レベッカさんとか、絶対バッサリ切り捨ててくれるだろ、これ。


 諦めた。

 誠に遺憾ながら、俺はどうやら変態らしい。

 違うけどな?


「……でもさ、だったらどうやってその度胸を活用すればいいわけ?」

「ナ、ナッちゃんの度胸ってもう、マックスじゃないですか? これ以上伸ばせませんよぉ」


 話を戻して。

 二人の言う通り、ヒーシャの才能と比べてナフのそれは活かし方が難しい。

 伸びしろが少ないというのもその通り。

 そもそもナフは現状でも、そうそう戦闘中のことで動揺しないなら、才能を伸ばすと言っても何をすればいいのやら、だ。


「その才能を活かして、戦い方を変えるんだ」

「それ……めちゃくちゃ難しくない?」

「そ、そうでもないよ? アタシは光魔法を戦闘に組み込んでるし、ナッちゃんだってできるよ!」

「気軽に言ってくれるなぁ……」


 とはいえ、レアスキルを手に入れたら二人の戦い方は大きく変わってくるだろう。

 そうでなくとも、覚えたスキルがこれまでのスキルと関係なかったら、戦い方は否応なしに変化する。


「というわけで、どっちにしろ今後とも冒険者を続けていくなら、こういう変化の対応は必須だ」

「……そう言われると弱いなぁ」


 冒険者と鍛冶師、どっちの道を選んでも後悔のないようにするために。

 そう決めて、どちらにも本気で打ち込むと決めたナフには、その一言は効くだろう。


『よっ、色男』

『なんでだよ』


 クロのよくわからない野次は無視して。


「でも、そこまでいうからには、何かしら案はあるんだよね?」

「まぁな。……別に自分で考えて貰ってもいいんだが、時間がないからな」


 本来ならこういうのはヒントを出して、自分で答えを導き出してもらうのがナフにはいいんだろうが。

 俺のパワーレベリングのせいで、ナフはもうすぐレベル30、時間がない。


「具体的には、そうだな。ナフ、ヘイトスキルってのは、敵の意識を自分に引き付けるスキルだよな?」

「うん、そうだね」

「変なことを聞くんだが、んだ?」


 全員が、その言葉に首を傾げる。


「ツムラさん、ヘイトスキルのメリットはヘイトを集めることだろ? そうでなきゃ、タンクは何のために……」

「全体で見ればそうだ。でも、もっと小さい視点で見れば、自分にヘイトを集めるってリスクしかない危険な行為だぞ?」


 あくまで、事実だけを1つの視点から見れば、という話だが。

 それはヘイトスキルが、あらゆる戦闘スキルの中で、唯一特殊と言える点。


「だったら、ヘイトスキルにはリスクに見合ったプラスがあってもいいんじゃないか?」

「ツムラさん、まさか――」

「ああ、ぞ」


 というわけで、俺達は方向性を決定するのだった。

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