第133話

 というわけで、これからしばらくはナフの冒険者としての能力向上に努めることとなった。

 パワーレベリングは一旦おやすみだ。

 もちろん、冒険者としての能力を向上させるにはモンスターハウス作戦で、多くの魔物と戦う経験を積むことが一番なので、結局パワーレベリングにはなるのだが。


 少し、歩みを遅くすることにしたのだ。


 まず、冒険者として活動すると同時に鍛冶師としての修行をナフがすることになった。

 店主に今回のことを話したところ、すでに段取りは整えていたようで、そう提案されたのだ。

 一日ごとに、冒険者活動と鍛冶師の修行を行う。

 もちろん、どちらも本気で。

 そうしてレベルが30になった時、覚えたスキルで進路を決める。

 とても分かり易い方針だ。


 そして、今日はそんな二足のわらじが始まって二日目。

 初日は鍛冶の修行だった。

 冒険者活動としては、これが最初の一日になる……のだが。


「ぉぁょー」

「ナ、ナッちゃん!?」

『溶けてる……』


 ナフは溶けていた。

 それはもう、ぐでんぐでんに。

 珍しくナフがギルドでの集合に遅れてきたと思ったら、この有様である。

 まぁ、何故かは想像がつくが。


「オヤジ、マジ、スパルタ」

「あはは……」


 それはもう、みっちり扱かれたのだろう。

 肉体の疲れは眠れば取れるが、精神の方はそうも行かない。

 ぐでっとなるのは、致し方ないだろう。


「凄いんだから……経験値溜まったよ、魔物も倒してないし、人助けもしてないのに」

『過酷な環境に身を置くと、女神様がボーナスくれる」


 ともあれ、ギルドで朝食を済ませるころには、概ねいつも通りのナフに戻っていた。

 今日はそのまま森に移動する。

 モンスターハウス作戦をダンジョンでするかは、森での行動次第だ。


「じゃあ早速だが、ヒーシャはナフの“才能”って、何だと思う?」

「え? ええっと……どしゃー! ってところですか?」

「多分あってるんだが……効果音だと他人に考えは伝わらないんだ」

「ぴえぇ」


 感覚派のヒーシャに聞いた俺が間違っていた。

 アレだ、ヒーシャに他人を指導させてはいけない。


「じゃあクロ」

「え? 言わせたいの? ツムラのえっち」

「お前は何を言ってるんだ……」


 クロに振ったら、いきなり分けの分からないことを言われた。

 どう考えても違うだろ?


「こほん、とりあえずそうだな……ヒーシャ、ナフ」

「は、はひっ」

「えーっと、どうするつもり?」


 とりあえず、こうなったら口で説明するよりも――


「いまから俺と模擬戦をするぞ。二人まとめて掛かってこい」


 ――身体を動かしたほうが早い。


「ぴええええ!?」


 ヒーシャは、その言葉が完全に不意打ちだったのだろう、思い切りよく鳴いていた。

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