第126話
「いくら燃費がいいからと言って、無茶なイメージを加えるとそりゃあ無駄も増える」
『自然の摂理』
結局のところ、問題はそこだった。
火魔法は火で何かを燃やすもの。
それが何かを燃やさないというのは、はっきり言って矛盾している。
理屈が通らないイメージは、俺の中ではきちんとイメージしていても、魔力がそれをうまく形にできない。
どこかを犠牲にしないといけないということだ。
「しかしなあ、かといって俺の魔法におけるメインウェポンはやっぱり火だ」
『私に会う前、森で火魔法使っても森、燃えなかった。十分だと思う』
「そういわれるとそうなんだが……」
眼の前に転がった課題をそのままにしたくない。
学生時代の自分に言ったら卒倒しそうな理由で、俺は燃えない炎を諦めきれなかった。
『でも、無茶。炎は燃えてる時点で何か燃やす』
「そうなんだよなぁ……燃えない炎とか本当に何言ってるんだって話だし……」
先程のあれは、そう考えればほとんど大道芸のようなものだ。
奇天烈すぎて実戦には向かない。
だが、やって見せれば絵面の面白さもあって、それなりに受けるだろう。
俺の知り合いに見せると、ヒーシャ以外はドン引きしそうだが。
とにかく、炎をぶつけても燃やさない方法は難しい。
とすれば発想を転換するほかないだろう。
視点を変えて、全く別の方法を模索する。
「いっそ、燃えた炎が勝手に鎮火してくれりゃあいいんだが」
『燃えたのものを消す、火魔法の範疇外』
「なら……燃えてなければ……」
そう、燃えてなければ、燃えたものを消さなくていい。
何を言っているんだ?
いや……それでいいんじゃないか?
「そうだ」
『ん……思いついた』
どうやら、その発想に行き着いたのはほぼ同時だったらしい。
「燃やさなければいいんだ」
俺は、そう、一見すると訳の分からない言葉を言葉にして、早速行動に起こすこととした。
その後、しばらくゴブリンを探した。
討伐依頼は討伐依頼、ついでにこなしてあることを試そうというのだ。
程なくしてゴブリンは見つかり、早速俺はそいつを討伐する。
「火よ!」
火魔法中級。
それを――散弾のようにぶっ放した。
無数の火が当たりに散らばっていく。
「ぎゃぎゃ!?」
それらは、ゴブリンに当たったものは、中級の名にふさわしい派手な燃えっぷりでゴブリンを焼き尽くしていく。
ゴブリンに当たらないものもある。
それらは、木々に当たる直前で消えてしまった。
ようするに、着弾する寸前で消滅したのである。
ゴブリンを燃やしていた炎も、火がゴブリンを多い、地面に達しようかというところで消滅する。
後には焼け焦げたゴブリンがのこり、それもすぐに消えてしまった。
「こんなもんか」
『ん、成功』
何をしたか。
魔物以外に当たりそうになったら消滅するというイメージを付与したのだ。
結果は大成功、ほとんどMPの消費がなかった。
これが、“燃えそうなものに当たりそうな時に消える”とかだと、MP消費は燃えない炎をそんなに変わらなかった。
面白いことに、魔物に対象を限定すると消費が一気に抑えられたのだ。
『女神様の加護』
「まぁ、そうとしか言いようがないよな」
もしくは、忖度とか。
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