第125話

「次は火魔法だ」

『おー』


 気を取り直して、というわけではないが。

 治癒魔法のバフを一旦打ち切って、火魔法の検証に移る。

 一応、個人的にはこっちの方が本命だ。

 治癒魔法に関しては、正直効果は想像がついてたからな。


「火よ」


 中級を使うという意識の元、起点となるワードは初級と変わらない。

 手のひらに炎を生み出すイメージで魔法を使う。

 初級だとちょっとした火の玉が浮かぶ程度だったが――


 俺の手のひらから、火柱が上がった。


「うおっ!」

『山火事注意』


 慌てて、生み出した火をかき消す。

 開けた場所でやっていたから、周囲に被害は出ないものの、少し衝撃的だった。


「これはしかし……燃費よくなりすぎだろ」


 これだと、森の中で安易に火魔法の中級を使うことはできないだろう。

 もちろん非常時なら話は別だし、そもそもこの世界で森の中で火魔法をぶっぱしたとして、それで誰かが捕まるわけでもないのだが。

 なお、森が燃えたら話は別だ。

 ちょっとそればっかりは、俺も擁護できない。


「使い方に気をつけよう。試しにイメージに延焼を防ぐ感じで要素を付け足してみるか」


 とはいえ、だったら俺にはある解決手段がある。

 イメージの改善。

 魔法のアレンジをする上で、一番重要な部分だ。

 これを利用して、仮に炎が木々などにぶつかったとしても、燃え移らないイメージを付与する。


 そうすると、俺の撃ち出す炎は単純に熱く、魔物を倒すための手段になる。

 うん、悪くないじゃないか。


 というわけで試してみた。


 手近な木に向けて炎を放ち、それが木に燃え移らないかの実験をする。

 これができれば、だいぶ炎を使うに怪しい場所で、困ることはなくなるだろう。


「火よ!」


 イメージは、ゲームでただ魔物にダメージを与えるための魔法。

 そのには影響を考えず、与えたダメージが数値で表現されるような、そんな魔法。


 ――結果、火は寸分違わず木々に着弾。

 万が一に備えて水魔法を構えつつ――その後を見守った。

 結果は成功だ。

 火は木にぶつかると、当たりに火の粉を撒き散らして消えていった。

 もちろん、火の粉も周囲に燃え移ることはない。


『成功』

「ああ、ただ……」


 結果は成功だった。

 だが、過程に問題があった。


「MP消費が激しい。今の俺が放った炎。あれで倒せるのはせいぜいスライムとゴブリンだけ。もっとでかいの相手に、これでは無茶だ」

『ん、何かしら考える』

「そうだな」


 クロの言葉に、俺は深く頷く。

 なにせ、魔法について考えるのは楽しい。

 オタクとして、ファンタジーの世界観を考察するのは、異世界における何よりの楽しみと言っても過言ではなかった。


 あ、レベリングは別の話ね。

 アレは俺の人生だから。

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