第119話
「こ、こここ、ここなんでどうでひょう!!!」
ヒーシャは緊張していた。
めちゃくちゃ緊張していた。
いや、少し落ち着いてくれ。
大丈夫だから、俺は逃げないから。
「っていうか、かなり高そうなレストランだけど」
「はひ、フードファミレスっていう、昔愛子が作って、世界中に広がっているお店です」
「ってファミレスか」
上品な作りをしているが、ファミレスらしい。
愛子が作ったっていうんなら納得だ。
ファミレス系の料理で無双した愛子がいたんだろう。
美味しいもんね、ファミレスのあれやこれや。
安牌、とも言う。
ただまぁ、こっちの世界だとファミレスの料理を再現するとなると高級路線にならざるを得ず、外観も自然とそうなっていったと。
家庭的な味だと思うんだけどなぁ。
まぁ美味しいことは保証されている。
「もしかして、ナフが助かったときに食べに行ったのって、ここか?」
「は、はひぃいいい。レベッカしゃんにおしえてもらいましたぁ」
それ、俺とデートするために教えたんじゃないの?
あの人もクロ並みに考えてることが解らないので、ありそうだ。
ともあれ、二人で入って席に案内される。
店の内装は、外装と比べるとファミレス感が強く、それでいてインテリアなんかは結構豪華だった。
客層は、カップル連れや家族連れが多い。
案外、庶民も利用しているんだろう。
強いて言うなら、学校帰りの学生が屯するような場所ではない、という程度か。
「はえぇ……」
初見じゃないはずなのに、圧倒されている雰囲気のヒーシャ。
まぁ、あんまり普段はこういう場所に行ける立場ではないだろう。
家族が多すぎるからな、高級料理はあまり食べられまい。
とりあえず、適当に頼むことにした。
俺はカルボナーラのスパゲティを、ヒーシャはナポリタンにサラダをつけた。
うーん、実にファミレス。
「あうう、いっぱい料理があって混乱します……」
「また来たら食べればいいさ」
「しゅ、出費が……!」
まぁ、それはしょうがない。
とはいえ、最近はナフもかなり稼げているとは思う。
モンスターハウス作戦は素材のドロップがとにかく多く、更にはアイテムボックスのお陰でそれをすべて回収できる。
だいたい、一日一万Gくらい。
三人で分けても三千Gは硬い。
一日の稼ぎとしては、正直破格といってもいいくらいだ。
俺換算でも、一月くらい暮らしていた森の稼ぎが、まぁそんなもんなわけだからな。
「んん、ソースがあまくておいひいれす」
「口に付いてるぞ」
「え、あうっ」
恥ずかしそうに、ヒーシャが口元を覆った。
緊張は、だいぶほぐれているようだな。
ならば、と俺は早速切り出すことにした。
「じゃあヒーシャ。……どうして俺を夕飯に誘ったんだ?」
「けふっ」
あ、むせた。
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