第111話
「というわけで、魔法の効果にアレンジを入れていこう」
「お、おー」
「いや、無茶でしょ」
控えめなヒーシャと、半目のナフ。
反応はレベッカさんと同じく、芳しいものではなかった。
まぁ、そりゃそうだ。
「世の中、ツムラさんみたいに魔法を使うときに全部手動でやってる人なんてほとんどいないよ」
ナフの言う通り、俺のやっていることは非常に特殊なケースだ。
拳銃の引き金を引けば弾丸は発射されるのに、俺は毎回拳銃を一から作って弾丸を発射している。
何なら弾丸すら一から作っていると言っていい。
それもこれも、俺が様々な創作で、ありとあらゆる“魔法”の使い方を見てきたからこそできる芸当。
何なら、俺の魔法の使い方は魔法というより超能力の方が近いくらいだ。
「で、でもナッちゃん、ツムラさんは本気でできるって思ってるよ?」
「そうだぞ、ナフ」
「ヒーシャはツムラさんに甘すぎだと、私は思うなぁ」
それでも。
ナフの発言はともかく、ヒーシャの言う通り不可能ではないと思っている。
なぜなら、アレンジといっても、そこまで複雑なことをしようと思っているわけじゃないからだ。
「じゃあ、まずはヒーシャ。中級の支援魔法を使ってみてくれ」
「えっと、わ、わかりました」
というわけで、早速アレンジを初めていこう。
アレンジするのは、中級の支援魔法だ。
初級ではダメだ。
アレをアレンジする意味はないからな。
「んで――それをきっちり三秒で効果を打ち切ってみるんだ」
「……? えっと」
「まずは、言ったとおりにやってみればいいんじゃない?」
俺の不思議な要求に首を傾げるヒーシャと、外野だからか適当言っているナフ。
とはいえ、ナフの一言でヒーシャは俺の要求を了承した。
俺の言われた通りに、バフを俺にかける。
そして、三秒後。
「えっと、効果を終了しました」
ちょうどぴったり、ヒーシャはそういった。
ステータスを確認して、俺もバフの効果が切れたことを確認した。
「じゃあヒーシャ、質問なんだが……ここから次の中級支援魔法を使うのに必要なリキャストはいくつだ?」
「……? えっと、十五秒です」
これ事態は、ヒーシャに質問するまでもなく、俺だって知っていることだ。
あくまで、本題に必要な前フリである。
「――それ、おかしくないか?」
「はぇ? ど、どういうことですか?」
「だって考えてもみてくれ、どうして効果時間が十分の一なのに、リキャストは十五秒も必要なんだ? 効果時間を短くしたら、リキャストだって短くなるべきだろ」
「で、でも……中級支援魔法ってそういうものですし……」
「それがおかしいんだ。MPの消費だってそうだぞ。効果時間が短いなら、MP消費だって少なくなるのが普通だ」
俺が考えた……というか、おそらく詠唱を考えた愛子が想定した魔法のアレンジ方法。
それを、俺は試そうとしていた。
「リキャストが短くならないのはおかしいって気持ちで、魔法を使ってみてくれないか? リキャストを短縮できると思うんだ」
つまりは、そういうことだった。
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