第106話

 効率を上げるということは、すなわち戦い方を改善するということだ。

 これは元から俺も考えていたことで、このダンジョンを攻略する間に、ある程度形にしたいと思っていた。


 結局のところ、俺と二人の関係は一時的な協力関係だ。

 俺にもメリットがあるから、それが成り立っているだけで。

 多分、本格的にパーティを組もうとしたら、二人には遠慮されてしまうだろう。


 ならば、こうして協力関係でいる間に二人が強くなればいい。

 俺がいなくなった後も、レベル40の冒険者にふさわしい強さが二人にあれば、誰も文句はないはずだ。


 その点、レベリングにヒーシャが目覚めたのは追い風だった。

 レベリングの効率改善という形で、戦い方の改善ができるのだから。

 これ以上、お誂え向きな理由はない。


 というわけで、俺達は現在森の中にいる。

 何かしら練習をするなら、邪ノシシが出てくる可能性のある危険なダンジョンより、こっちの方がいい。

 視界も開けてるしな。

 魔物の脅威は、クロが察知してくれる。

 広い場所なら、脅威が向かってくるのが理解ってるなら対処は容易だ。


 ダンジョンに行くにしても、今のままだとモンスターハウスできるのは二時間が限度。

 どっちにしろ、午前中は練習に当てたり、休憩に当てたりする必要がある


「これまで、少し組んだだけだけど、俺から見てヒーシャはバフの切り替えが巧いよな」

「え、あ、はい。……レベッカさんもそう言ってました」

「私達は、二人でしか組んだことないから、他と比較できないけどねぇ」


 それに関しては、俺も二人としか組んだことないので、条件は同じだ。

 バフの切り替え。

 つまり、ATKのバフの効果が切れたら、すかさずDEFのバフを入れるような。

 中級バフのリキャスト以外で、バフが途切れないのだ。

 体内時計がそれだけ優秀なのだろうが、バッファーとしてそれは非常に優秀なスキルだ。


「ん、ヒーシャ、完璧」

「妖精のクロちゃんにそう言われると、気恥ずかしいです……」

「でも、完璧すぎ。伸びしろない」

「あうう」


 いや、クロは褒めてるから気にしなくていいぞ。

 ともあれ、ヒーシャはバッファーとしての能力をほぼ完璧に備えている。

 その方面でこれ以上戦い方を改善することはできない。


「その上で聞きたいんだが、ヒーシャはバフの切り替えを“感覚”と“計算”、どっちでやってる?」

「え、ええっと……感覚、ですかね……基本的には毎回数えてるんですけど、わーってなっちゃったときは、勘でやってます」


 うわ、天才だ。

 マジの天才だ。

 でも、それなら話は早い。

 ヒーシャは感覚派の天才。


 だったら、それはこういう使い方もできるはずだ。


「ヒーシャ。それじゃあその感覚を、魔法を使うイメージにも当てはめられないか?」


 つまり、魔法の効果を感覚で書き換えるのだ。


「……それ、とんでもないこと言ってない?」


 ナフの突っ込みは、まぁ確かにその通りだが。

 とりあえず何事もチャレンジ、まずはやってみることにしようじゃないか。

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