第105話

「はええ、本当に500経験値が……」


 後からやってきて、俺の解説を聞いたヒーシャが感嘆した様子でこぼす。

 対する俺とナフはといえば、思った以上にヒーシャが早く来たので、急いで朝食を済ませていた。

 というか、だいぶ話し込んでいたんだな。


 しかし、俺はともかくナフだって朝食を食べ終えていない。

 実際ヒーシャが、普段より早く来たというのもあるんだろう。


「んぐ、んぐ。今日の朝食セットは当たりだね……普段よりパンがよく焼けてるよ」

「当たり外れがあるのか……いや、当然といえば当然か」


 この世界はいくら転生者が頑張ってきたとはいえ、基本的な文明レベルは中世風異世界のそれを逸脱していない。

 パンを量産する技術は、まだまだ完璧じゃない。

 いや、そんなこと考えてる場合か。

 俺はむぐむぐと、頼んだ朝食を呑み込んでいく。

 今日の朝食は、スープと焼き魚だ。

 魚はこの世界特有のもので、鮭に近いかも知れない。


「ふ、ふたりとも。ゆっくりでいいですからね?」

「わかっへる」


 食べながら返事をするんじゃない、ナフ。

 行儀が悪いぞ。


「あ、えっとそうだ……二人に食べながら聞いてほしいんですけど」


 ヒーシャがそう切り出す。


「アタシ……モンスターハウス作戦を、もうちょっと効率化できるんじゃないかなって思うんです」

「っへいうほ?」

「えっと……ってナッちゃん、口元にパンがついてるよ」


 ごしごしとナフの頬を拭うヒーシャ。

 普段はナフがヒーシャの面倒を見ている印象だが、ナフがルーズな時はヒーシャの姉力が出てくるんだな。


「しょ、正直……ツムラさんに初めてこの方法を説明された時は、そんなにうまくいくわけないと思ってました」

「わたひも」

「でも、実際にやってみて……戦闘中は大変ですけど、終われば本当に500点稼げちゃって」

「すごひよね」


 ナフは食べ終わってから喋ろうな?

 それにしても、ヒーシャは珍しく饒舌だ。

 これは、なんていうか。


「もし、私達がうまくできるようになれば、もっと効率よく経験値を稼げるんじゃないかって思ったんです」

「まぁ、そうだな。改善できる部分は多い」

「ですよね!」


 ずいっと、ヒーシャはこっちに身を乗り出してくる。

 なんとなく、理解ってしまった。

 コレはアレだ。



「私、!」



 ――ヒーシャ、レベリングにハマっているな?


『あーあ、沼に引きずり込まれた』

『なんて人聞きの悪い事を言うんだ』


 クロの視線が痛い。

 いや、揺り籠の中にいるから視線は感じないんだけど。

 それはそれとして、隣で顔をひきつらせているナフが何とも印象的だった。

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