第103話

「お疲れ様」


 肩で息をする二人に声をかける。

 ところで、肩で息をする理由が二人の間で異なる気がするのは気の所為だろうか。


『へへ、ふたりともいい顔してる』

『それ二人にも聞こえてるぞ』

『はっ』


 ジトっとした目で、ナフがこっちを見てくる。

 いや俺じゃないって。

 ってああ、ペンダントを睨んでるのか。


「どうだった? 邪ノシシとの戦い」

「ん、あーえっと、アレだね。三人いるだけで戦いやすさ全然違うね」


 確かに。

 ナフの言う通り、先程の戦いはかなりスムーズだった。

 理由は俺が横から牽制を入れたからだ。

 ナフとヒーシャは邪ノシシを正面から受け止めることができる。

 だが、受け止めた時点で手詰まりなのだ。

 崩せないと、あのままバフが切れてナフが押し切られるだろう。


「あ、後、アタシのレベルが一つ上がりました」

「マジか」

「アタシとナッちゃん、そんなに経験値の差がないので……」


 つまり、レベル25になったということは。

 新しいスキルを一つ覚えるということだ。


「お、やったじゃんヒーシャ。覚えたスキルは?」

「えーっと……何故か“光魔法:中級”を覚えたよ、ナッちゃん」

「…………いや、ホントなんで?」


 不思議なスキルをヒーシャは覚えた。

 光魔法? 普通に行けば治癒魔法の中級か水魔法の中級じゃないか?


 三人で首をかしげた。


「ん……質問」

「あ、クロちゃん。どうしたんですか?」

「ヒーシャにとって、ツムラの必殺技って?」

「ひ、ひっさつわざ……ですかぁ?」


 いわれて、うんうん考え込むヒーシャ。

 しばらくそうしていると、


「あ、えっと……あの白い針みたいな奴で、敵をビシってやっちゃうやつ、です」

「後は……ツムラの行動で印象に残ってるところは?」

「えっと、えっと」


 怒涛の質問攻め。

 クロは何かしら当たりをつけているのか?


「ナッちゃんを、治癒魔法で治すところと……アタシを治癒魔法で気持ちよくしてくれるところ、です」

「後者はやめときなよ、ヒーシャ」


 ナフの言葉に、ウンウンと俺は頷く。

 クロはえー、という顔をしていた。


「とにかく。それじゃ決まり。ツムラの光ってる魔法、ヒーシャ憧れてる」

「光ってる魔法……ですかぁ?」

「前者は火魔法で、後者は治癒魔法なんだが……」

「でも、どっちも光ってる」


 謎だ。

 しかし、妖精がそういうなら間違いないんだろう。


「で、でもそれだとアタシ、ツムラさんに憧れてるってことに……あわわ」

「ぐっ」


 何がぐっ、だ。

 なんでサムズアップしてるんだこの妖精。


「ところでツムラさん、これ、後どれくらいやるの?」

「流石に、一日に何時間もやるのは、負担が大きいだろうから、後一時間くらい」

「うーん、本当にこれでツムラさんの言う通り、強くなれるのかなぁ。今のところ、邪ノシシ込で経験値、250しかたまってないよ?」


 つまり、後一時間で+150。

 合計は400くらいになるはずだ。


「あんだけやったのに、って感じ。本当に500も貯まるの?」

「ああ、そうだな。明日またステータスを見てみろ、すごいぞ?」


 半信半疑なナフ、それでも俺達は休憩の後、もう一回モンスターハウス作戦を決行するのだった。

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