第102話

 パワーレベリングは続く。

 俺は基本的に、ヒーシャ達から遠い場所を飛び回りながら、適時魔物を狩っている。

 狙うのは主にクローバットだ。

 邪ノシシもでてくれば倒すが、現在俺が倒した邪ノシシは二体。

 あんまり出てこないな。


 経験値が100手に入る邪ノシシはまぁ美味しいんだが、それ以外の連中は経験値が渋い。

 一番大きいのがクローバットの20点だ。

 それでも、倒していけば結構な数字になる。


 手元のマナクロックで、すでに時間は一時間が経過しようとしていた。


『そろそろ休憩するか?』

『さんせーい、森で検証してそのまま来たから、流石につかれちゃった』

『んふふ、ナッちゃんも過剰回復しようねぇ』

『う、うーん』


 解除方法は簡単だ。

 俺がヒーシャにもう一度治癒魔法をかければいい。

 過剰回復という異常を、治癒するイメージで魔法を使うのだ。


「あうう……」

「残念そうにしないでよ」


 そうすると、魔物のポップは終わった。

 だが、終わる直前に――


「あ、また邪ノシシ」


 大物が出た。

 そうだな、とりあえず……


「三人で倒してみるか」

「……!」


 俺の一言に、目を見開く二人。


「試しにやってみよう。全員で倒せばその分経験値も全員に行き渡るし、二人で今後やっていくにしても、邪ノシシは二人で倒せるようになっておきたいだろ?」

「……そう、だね」

「は、はい」


 まぁ、俺が見ているからそうそう変なことにはならないはずだ。

 それに、俺と違って二人はHPが普通にある。

 一発や二発食らった程度じゃ、どうにかなることもないしな。


『周りの魔物を片づけながら、必要に応じてサポートする。基本は二人で当たってくれ』

『おっけー!』


 気合を入れながら、ちょうど効果が終わった頑強をかけなおすナフ。

 俺が周囲の魔物へ飛びかかると同時。


「ぶもおおお!!」


 邪ノシシが、ナフ――の後方にいるヒーシャへ向けて、突っ込んできた。


「ナッちゃん!」


 ヒーシャが、中級の支援魔法をナフに使う。

 三十秒の間、ナフのDEFが強化されたわけだ。

 これで――


「う、おおおおっ!」


 ナフが、正面から邪ノシシの攻撃を受け止められる。

 ダメージはない。

 だが、勢いが強いからかナフは何とか攻撃を受け止めている感じだ。


 俺は急ぎ、残りの魔物を片付けながら――


「火よ!」


 火魔法を邪ノシシにぶつける。

 とはいえ、ホーミングはしていない。

 回避されてしまうだろう。

 だが、回避すればナフがその隙を突く。


「ヒーシャ!」

「うん!」


 回避でバランスの崩れた邪ノシシを、ナフが吹き飛ばす。

 ヒーシャがそこでDEF強化の中級支援を打ち切って、ATK効果の初級支援に切り替えた。


 同時、ナフが手斧に赤い光をまとわせて――


「おらぁ!」


 投げる!

 赤い光は、『斧攻撃:中級』のスキル効果を纏っている証。

 そんな投げ斧は、寸分違わずふっ飛ばされた邪ノシシに突き刺さった。


「追撃! 火よ!」


 良いダメージだ。

 だが、止めには少し足りないだろう。

 俺が火魔法を軽く邪ノシシにぶつける。


 そして、


「これで……トドメだ!!」


 ナフは、背中の大斧を掴み、飛び上がる。

 ダメージを受けて邪ノシシはもはや、動くこともできない。

 最後は、一撃。


 ナフの大斧が、邪ノシシの脳天をかち割った。

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