第98話
「ん、ぅ……あっ」
「ね、ねぇ……」
モゾモゾと、艶めかしい声を出すヒーシャ。
それを見ながら、ナフは顔を真っ赤にしてこっちを見ている。
「はぅっ」
「こ、これ……ほんとに大丈夫なの!?」
いやまぁ、大丈夫か大丈夫じゃないかでいえば大丈夫なんだが。
ちょっと大丈夫すぎるところはあるかもしれない。
「らいじょぶ、らいじょぶだから、なっひゃん……んぅ」
「あわわわわわ、ヒーシャが大人の階段登ってる……」
「登ってない! これは――」
俺は、一度“それ”を切り上げて。
「治癒魔法を使っているだけだ」
同時、ヒーシャを覆っていた光が一旦収まる。
後には、頬を赤らめたヒーシャが肩で息をしているのみ。
その様子は、なんというか――
「ひ、ヒーシャが……湯上がりみたいになっている!!」
「えへへ、これさいこうらよ、なっひゃん……」
とても、リラックスしていた。
そりゃそうだ、治癒魔法で治癒しているんだから。
この世界は寝れば体力が全快する。
だからみんな、朝起きれば体力は全快、常に健康を保っている。
例外は、年齢的にそもそも健康の上限が低い老人くらいだ。
故に、マッサージなどの概念がこの世界にない。
そもそもマッサージでほぐす疲れがないのだから当然だが。
例外は湯治くらいか。
風呂に入るという行為は、疲れを癒やすだけでなく汚れを洗い流す意味もある。
何より、過去の愛子に温泉好きが多かったこともあり、この世界で入浴は普通に広がっている文化だ。
「今、治癒魔法でヒーシャを過剰に健康にしているんだ」
「す、するとどうなるのさ?」
「呪いの効果が強まる。魔の呪いは、健康になれば魔物を引き寄せるだろ?」
つまり――
「げぎゃぎゃぎゃ!」
――今俺達がいる、街の側にある森ならば、ゴブリンが大量に湧いてくるというわけだ。
なにもないところから、黒い靄のようなものを伴ってゴブリンが現れる。
「だ、ダンジョンの外で魔物がポップした……」
「呪いの効果だな。検証は成功だ」
頬を赤らめて、肩で息をしている少女を囲むゴブリン。
世が世なら“そういう”展開を予見させるが、それはそれ。
ヒーシャは過剰に健康になっているだけなので、別に戦闘は問題ない。
むしろ調子がいいくらいだろう。
「とりあえずゴブリンを殲滅しながら、ヒーシャの呪いの効果を確かめる。もう少し付き合ってもらえるか?」
「もう、何がなんだか解らないけど……ゴブリン相手に負けることはないし、わかったよ」
「が、がんばりまひゅー」
――ここまでやれば、俺がどのようにレベリングを行うかはわかりやすいだろう。
ダンジョンの中でヒーシャの呪いを使用してのモンスター大量発生。
それを利用したレベリング。
そうだな、モンスターハウス作戦とでも呼ぼうか。
今、俺達はそのレベリングのために、検証を行っているのだった。
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