第96話

「もしかして、レアスキルですか?」


 先にピンと来たのはヒーシャのようだった。


「ツムラさんって、レアスキル持ってるんだな」

「ああ、別に二人には話してもいいんだが……ちょっと事情があってな」

「事情、ですか?」


 レアスキル。

 情報として表示されることはないが、レベル25なのにスキルを四つしか持っていなかったら、必然的にレベル20で取得したのがレアスキルだとバレる。


「俺のバッファー能力は、レアスキルと関係ない」

「それだったらなおのことおかしいじゃん。どうやってギルドが認めたのさ」

「ステータスが実際にバフされたからだよ」


 少し、場所を変えて。

 人気のないギルドの端にあるテーブルで話をしている。

 応接室でもよかったが、それはもっと踏み込んで話す時でいいだろう。


「どうやったんですか?」

「その方法を詳らかにしちゃうと、騒ぎになってのんびりレベリングができないから黙ってるんだ」

「レベリングってそんなに大事かな」

「大事だ」


 即答。


「うおっ」

「悪い」


 のけぞるナフに詫つつ、


「だから、表向きはレアスキルでバフできるってことになってる」

「あ、あのそれ、アタシ達に話しちゃって、いいんですか?」

「話すべきところまでを話してるんだ。どうやってバフしてるかまでは、知ると二人が面倒事に巻き込まれるかもしれないから話さないし」


 なるほど、と二人がうなずいた。

 ようは、秘密にしているということを明かすことで、秘密そのものを明かさない誠実さを見せているわけだ。


「知ってるのは……レベッカさんと、クロちゃんだけですか?」

「そうだな。ヒーシャにも、いずれ話す時は来ると思うけど」

「……なら、よかったです」


 ともあれ、今はここまでしか話すことができないということを話した。


「あ、じゃあ実際のレアスキルって何なのさ?」

「誰にも言うなよ? 『アイテムボックス』だ」

「あいひぇむぎゅっ!?」


 ヒーシャが叫びそうになって、ナフに取り押さえられた。

 セーフ。

 でも、ナフも表情が引きつっている。


「さ、さすが愛子……ってことかなぁ、アイテムボックス、本当にあるスキルなんだ」

「まぁ、今度人気のないところで披露させてもらうよ」


 ともあれ。

 話としてはそんなところだろう。


 三人ともそう考えたからか、ナフはヒーシャの口から手を話し、ヒーシャも真面目な顔でこちらを見る。


「じゃあ、改めてふたりとも」

「はい」

「ああ」


 お互いに視線を合わせて。


「これから、よろしくな」


 俺達はパーティを組んだ。

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