4.バッファー少女とパワーレベリングとレベリング中毒者
第80話
昨日は午前中にナフを治してからは、クロが起きないのもあって宿でゆっくりしていた。
実質休日みたいなものだ。
なんで休日の朝に出勤しないと行けないんですか……
はっ。
嫌な記憶を思い出してしまった。
次の日、俺はギルドにやってきていた。
ダンジョンハザード後の処理がどうなったかを確認するためだ。
報酬とかも、今日渡されることになっている。
これで、ダンジョンに入れるようになっていたら、軽く上層で人助けマラソンを一回かな。
オーガの件で有耶無耶になっているけれど、宝箱がリポップしている。
レベリングをするなら、今が一番効率がいい。
『レベリング中毒……』
『おっと、心の声が漏れていたか。それにしても……』
揺り籠のなかから聞こえてくるクロの声。
相変わらずレベリングに関することだけは、ちょっと冷たい。
それはそれとして、今は別のことだ。
『すごい視線だな』
『うん、お外怖い』
クロは揺り籠の中で閉じこもっていたいようだ。
それくらい、ギルドの冒険者は俺を見ていた。
視線を完全に釘付けと言っていい。
「おい、アレが……」
「“鬼殺し”……」
けったいな二つ名がついている。
「ダイヤモンドオーガを素手で叩き殺したとか……」
「鬼より硬い防御力だとか……」
すごい、事実しか噂になってない。
でも正しくは、素手じゃなくてマギグローブである。
と言っても伝わらないだろうな。
マギグローブがマイナー武器種すぎる。
「運が良かっただけじゃないのか?」
「レベッカさんが倒したって言ったんだ、それならあいつが倒したんだろう」
中には、俺の活躍を疑問視する奴もいる。
そりゃそうだ、俺はどこの馬の骨とも知らない新顔だからな。
でも、その割には倒したことを信じる冒険者が多いとおもったが、そうか。
レベッカさんが保証したのか。
彼女がそれくらい冒険者から信頼されているのは、まぁそりゃそうだろうなという感想である。
「俺、あいつがヒーシャちゃんと話してるところをみたぞ。なんて羨ましいんだ……」
「受付も、いつもレベッカさんが応対してるからな。有望株なんだろうけど、やっぱ羨ましいぜ」
変わったところでは、俺がギルドの綺麗所と関わっていることに対する嫉妬も聞こえてくる。
レベッカさんが人気なのは当然として、ヒーシャやナフも人気なんだろうな。
そりゃそうか。
何にしても、総じて言えることは――
『……ツムラ、すごく愛子っぽいことしてる』
『解るか、クロ。妖精だもんな、解るよな』
実に、転生者だ。
こうやって、すごいことをして他人の注目を集める。
転生者なら、一度は経験してみたいSUGEE展開。
この世界の転生者である愛子も、それは例外じゃないんだろう。
こういう展開が妖精にとってもテンプレになるくらい、転生者はSUGEEするものなのだ。
正直、俺はレベリングができれば何でもいいが、それでも悪い気はしない。
たまにはこういうのもいいかもな、と思う俺であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます