第73話
その後、泣き腫らしたヒーシャを何とかなだめて、レベッカさんに討伐を報告する。
とはいえ、討伐事態はダンジョンからすっかり消え失せたバトルオーガを見れば解る。
お疲れ様でした、と嬉しそうなレベッカさんの姿に、俺も少し安堵を覚えた。
だが、問題はここからだ。
呪いをどうにかするためのアイテムがドロップしなかったと聞いて、顔を青ざめさせるレベッカさん。
俺が中級治癒魔法でどうにかするといい出した時の、完全に何を言っているか理解できない顔のレベッカさん。
とにかく、筆舌し難い百面相の末、レベッカさんは俺を信じてくれた。
「……そもそも、現状それ以外に頼れるモノはありません。ナフちゃんを救えるのは、ツムラさんしかいないんです」
まぁ、そうだよな。
最も確実な方法は、すでにどこにもない。
後は、俺に賭けるしかない。
とはいえ、俺のMPは現在すっからかんだ。
ナフも、一日二日でどうにかなることはないという。
だったら、まずは俺のMPを回復させないとな。
――夜、俺はびっくりするほどあっさりと眠りについた。
それほどまでに、精神的に疲れていたということだろう。
翌朝、比較的早い時間にドワーフ工房へ向かう。
なお、ステータスを見たらレベルが一つ上がっていた。
NAME:ツムラ
LV:26
EXP:14560(NEXT:1540)
HP:135/135
MP:130/130
ATK:125+30
DEF:125+5
MAG:125+20
MID:125
AGI:125
SKILL:『ステータス上昇均一化』『火魔法:初級』『治癒魔法:初級』『水魔法:初級』『アイテムボックス』『治癒魔法:中級』
これでナフを助けられたら、更にレベルが上がるかもしれない。
そこら辺は女神様の塩梅次第だが。
「あ、ツムラさん……」
「ヒーシャか……寝てないのか?」
工房の入り口で、ヒーシャと合流した。
目には隈ができていて、見ているだけで不安になる相貌をしている。
「ご、ごめんなさい。……色々とありすぎて、心がぐちゃぐちゃになっちゃって」
「いや、いいさ。……必ず助ける、俺を信じてくれ」
「……はい」
俺はできるだけヒーシャを安心させたかったが、彼女の顔色は優れない。
そう簡単に割り切れるものじゃないよな。
中に入る。
まだ開店前だから当然だが、人はいない。
鍵はかかっていなかったが、それは店主がカウンターで腕組みをして、俺達が入ってくるのを待っていたからだろう。
「……来たか」
「店主、サーチハンドはありがとう」
「ああ……そいつはくれてやる。今、この世界でそいつを持つのに一番ふさわしいのは、お前さんだ」
まずは、挨拶程度に、とおもったが。
随分と高く買ってくれているようだ。
なら、返すべき言葉は決まっている。
「じゃあ、店主の娘さんを助けたお礼として、受け取ることにするよ」
「…………そうか」
言葉少なに、それだけ返し店主は俺に背を向ける。
ついてこいと、そう言っている。
「娘を…………ナフを、頼む」
「ああ」
そこから、ナフの部屋に行くまでの言葉は、それだけだった。
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