第72話

 つまるところ、こういうことだ。


 俺は、今回の戦闘でレベルが25に上がっている。

 スキルを一つ覚えているはずだ。

 多くの場合は、取得するスキルは最初に取得したスキルの中級スキルだとレベッカさんは言っていた。

 だが、絶対ではないのだろう。

 レアスキルを取得する可能性があるが、それはもっとレアケースのはずだ。


 別のスキルを取得するケースもある。

 それは、どういう機会に起きるだろう。


 だ。


 例をあげよう。

 最初のスキルは攻撃魔法だったが、その後に治癒魔法を覚え、そちらでの役割ロールが得意な冒険者だったらどうだろう。

 そういう冒険者が、レベル20で攻撃魔法の中級を覚えるのは大きな損失だ。

 俺がステータスを管理している存在なら、そうはしない。


『クロ、ステータスは女神様が齎したものなんだよな?』

『うん。だから、管理、女神様』


 女神様は非常に善良な存在だ。

 今のところ、俺が知る限りそれは疑いようがない。

 だったら、女神様は俺達が取得するスキルをある程度配慮してくれているはずだ。


 そもそも、実際に治療できるのかっていう疑問はあるが、中級の治癒魔法を覚えないことには、そもそも挑戦すらできない。

 そして、挑戦できるなら、やって見る価値はある。


『これまでの俺の経験が、そう言ってるんだ』

『そうだね、ツムラは正しいよ』


 クロがそう言ってくれるなら、きっとうまくいくだろう。


 ――そもそも、これはダイヤモンドオーガの野郎が、必要なアイテムを落とさなかったのが悪い。

 魔物が、人に対して悪辣な存在なのだとしたら。

 女神はせめて、人を慈しむ存在で会ってほしいよな。

 少しばかりの祈りと、希望を込めてそう願う。


 ヒーシャは崩れ落ち、涙を流している。

 これを拭うには、慎重さとか、そういう問題ではなく。

 単純に、レベルと幸運が必要なのだ。


 そして、口に出すべき言葉は決まっていた。

 この世界に降り立った時、祈るように口にしたあの言葉を。

 俺にとっての、始まりの言葉を口にする。


「ステータス、オープン」


 NAME:ツムラ

 LV:25

 EXP:12820(NEXT:1230)

 HP:130/130

 MP:125/125

 ATK:120+30

 DEF:120+5

 MAG:120+20

 MID:120

 AGI:120

 SKILL:『ステータス上昇均一化』『火魔法:初級』『治癒魔法:初級』『水魔法:初級』『アイテムボックス』『治癒魔法:中級』


 『治癒魔法:中級』

 種別:治癒魔法

 効果:己が内なる魔力を、生命を活かす力に変えて、傷を癒やす。中級限定。


 ――何にせよ。

 何とか、最低限の切符は掴んだ。

 後は、実際にやってみるしかないだろうな。

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