第64話

「……攻撃ステータス240でもダメージが通らないなんて、とんでもない怪物じゃないですか」

「のけぞりはしたから、もう少しステータスがアレば攻撃は通ると思うんだが」


 その、“もう少し”があまりにも、遠い。

 一体あとどれだけ、俺は防御ステータスを削ればいいんだ?


「おそらく、ダイヤモンドオーガの軽減率は五分の一です。でなければ、攻撃を受けてのけぞることはないと思います」

「五分の一……防御ステータスが60前後だとして、突破に必要な攻撃ステータスは300以上、ですよね」

「そこまで防御ステ切り詰めたら、どう考えてもオーガの攻撃が通るぞ。そうなると俺の勝ち目が薄くなる」


 名探偵レベッカさんの推測に、あーだこーだ言う俺達。

 本当にダイヤモンドオーガの軽減が五分の一かどうかは不明だが、レベッカさんの推測なら当たっている可能性は高いだろう。

 とりあえず、それを前提に考える。


「サーチハンドのおかげでATKは265だとして、あと+30……」

「……265までATKを上げているなら、+35、どうにかできるかもしれません」

「っていうと?」

「あ、アタシ……バッファーなんです。中級の支援魔法が使えて、えっと」


 曰く、支援魔法は初級だと+15だが、中級だと+35までステータスを上げれるらしい。

 ただし、初級は連続使用できるが中級にはリキャストタイムが挟まる。

 なら、一番単純な方法は、ヒーシャに支援魔法入れてもらって、急いでダイヤモンドオーガを倒しに行く方法だ。


「効果時間は30秒で、リキャストが15秒……です」

「ふむ……」

「でも、30秒でダイヤモンドオーガ討伐は無茶……ですよね」

「明らかにタフだからな、あいつ」


 まぁ明らかに無茶なんだけど。

 悩ましい話だ。

 と、おもっていたらクロが出てくる。


「背負えばいい」

「……はい?」


 何を言っているんだろう、クロは。


「ヒーシャ背負う、ツムラ、ヒーシャ守りながら戦う。ヒーシャはツムラに背負われながら、支援魔法使い続ける」

「いやいやいやいや」

「ま、まま、まってくださいよぉ!」


 俺とヒーシャは全力で否定した。

 そりゃそうだ、いくら何でも無茶がすぎる。

 が、しかし。

 思わぬところから援護射撃が飛んできた。


「……それしかないかもしれません」

「レベッカさん!?」


 ヒーシャは顔を真赤にしていた。

 表情がころころと変わるので、愛嬌がある。

 ……が、今はそんなことを言っている場合ではない。


「ツムラさんのHPで、防御ステータスは絶対にこれ以上削れません。となると、ヒーシャさんが支援するしかないんです。背負われていれば、正面からの攻撃はくらいませんし、安全ですから合理的です」

「合理的でない部分も多いような……」


 ……いや、しかし。

 そうはいっても、他に手段はあるか? これより合理的か? と言われると疑問が残る。

 でもなぁ……ヒーシャさんがなぁ。


「――やります」


 え?


「や、やります。アタシ……ツムラさんの荷物になります!」

「人聞きの悪い事いわないで!?」


 普段はツッコミなんてしないんだけど、思わず突っ込んでしまった。

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