第60話
「え、よ、妖精……!?」
「? え、あ、え?」
レベッカさんが狼狽し、考え事をしていたヒーシャも意識をこちらに向けて困惑している。
そんな中で、黒髪の羽を背中に生やした少女。
妖精――クロが口を開く。
「初めまして、レベッカ、ヒーシャ。私は、クロ。見ての通り……妖精」
「!!」
クロの挨拶で、ようやくレベッカさんは状況を認識したようだ。
いや、ようやくってこともないんだが。
レベッカさんの名探偵ヂカラを考えると、遅いくらいである。
「妖精……!? あの、伝説の! それをツムラさんが連れている……?」
「そう、私、ツムラの道連れ。……フードの中から、あなた達、見てた」
「それって……」
レベッカさんの視線がこちらに向く。
おそらく、ほぼほぼ答えには行き着いているだろう。
だが、俺はそれに答えなくてはならない。
そもそもヒーシャは、話に全く着いてけてないからな。
「……俺は、愛子なんだ」
「いとし、ご?」
ヒーシャは、やはりよく解っていない様子。
だが、レベッカさんはもはや、俺がそう名乗っても驚きすらしなかった。
これまで散々、レベッカさんを驚かせたりドン引きさせてきた。
だからこそ、レベッカさんにとってその情報は腑に落ちるものだったんだろう。
「ええと、ヒーシャさん。愛子というのは……」
結果、レベッカさんは端的に内容をまとめてヒーシャに伝える。
あまりにわかりやすいものだから、内心俺もそうだったのか……となったが、それはともかく。
「……ツムラさんは、すごい人だったんですね」
「まぁ、幸か不幸か……な」
正直、自分でも自覚はないけれど。
そうとしか言いようがないからな。
「妖精は、いる。後は、揺り籠」
「……そう、ですね。一度ギルドに戻って、倉庫を探してみます」
「ダンジョン内も探してみるよ、最高レアの宝箱はまだ誰も見つけてないはずだから、可能性はある」
とにかく、話はまとまった。
妖精さえいれば、揺り籠は現実的なダイヤモンドオーガの攻略手段として機能する。
レベッカさんが本命だが、それを待っている間時間がある。
俺も、ダンジョン内を探索して、妖精の揺り籠を探してみることにした。
「あ、えっと……」
「ヒーシャさんは、私と一緒にギルドで妖精の揺り籠を捜索しましょう」
「それ、なんですけど……」
おずおずと、ヒーシャは提案する。
「ダイヤモンドオーガの攻撃ステータスが解ったほうがいいんです、よね」
「ああ、そうだな」
「ならアタシ……心当たりがあります」
……心当たり?
何故か、その言葉に俺は違和感を覚える。
俺自身が、何かを見落としていた気がしたからだ。
「サーチハンドっていう、アイテムがあって」
――それって。
「……! そうでした。ごめんなさいヒーシャさん、それを忘れていて」
「い、いえ。アタシも思い出したのはついさっきで……」
「ちょ、ちょっとまってくれ!」
俺は、ヒーシャとレベッカの会話に割って入る。
まってくれ、どうしてヒーシャがそれを知っているんだ!
「サーチハンドってのは、アレだろ? ドワーフ工房の店主が持ってるレアアイテムのはずだ」
「……そういえば、ツムラさんの武器はマギグローブでしたね。もしかして、ドワーフ工房の店主さんが?」
「あ、ああ……そうだ。なぁ、どういうことだ? アレは相当なレアアイテムだろ、店主に貸してくれとでも言うつもりか?」
「はい」
ヒーシャがうなずく。
「アタシの仲間……ナっちゃんはドワーフ工房の店主さんの娘なんです。呪われてるのは……その子」
つまり、
「アタシも、店主さんとは顔見知りなので、……貸してもらえるはずです、サーチハンド」
――打開策は、揃いつつあった。
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