第51話

 ひとまず、今回最も喜ばしいこととして、レベルが1つ上がった。

 死者が出なかったことじゃないのかって?

 死者が出なかった結果、経験値がいっぱいもらえたんだから一番喜ばしいことなのは、こっちの方だ。


 NAME:ツムラ

 LV:24

 EXP:10010(NEXT:1990)

 HP:130/130

 MP:125/125

 ATK:120+5

 DEF:120+5

 MAG:120+3

 MID:120+3

 AGI:120

 SKILL:『ステータス上昇均一化』『火魔法:初級』『治癒魔法:初級』『水魔法:初級』『アイテムボックス』


 アレだけ大立ち回りをしておいて、レベルが一つしか上がらないのは全く持って業腹である。

 全てはバトルオーガの経験値が少なすぎるのが悪い。

 とはいえ、救助事態の経験値は結構なもんで、レベル事態は上がっているのだから文句はない。


 問題は――


「……人、見てる」

「ああ、見られないように気をつけろよ」


 緊張した様子のクロに、一言声をかけてギルド内部を進む。

 今回の件で、それはもう俺は注目を集めた。

 解っていたこととはいえ、もはや完全にこのギルドの空気は俺の一挙手一投足に依存しているな、とも思う。

 なんか、適当にそこら辺の人に声かけただけで、大騒ぎになってしまいそうだ。


 幸いなのは、視線に悪意が少ないこと。

 そもそも彼らは俺のことを全く知らない。

 知らない相手を一方的に嫌いになれる人間は、ごく少数だ。

 もちろん、それは逆の場合にも言えるが。


 ともかく、俺がここにいたら他の冒険者の仕事を邪魔してしまうだろう。

 怠惰な連中はともかく、そうじゃない奴だっているんだからな。

 ってか、俺の存在に影響を受ける冒険者は圧倒的にそっちのほうが多い。


「あー、失礼」

「ひゃ、っひゃい!」


 受付の人に声をかける。

 今日は普段の受付嬢さん――レベッカさんがそこにいなかった。

 見知らぬ、明らかにこちらを見て緊張している女性である。


 とりあえず落ち着くように言って、レベッカさんに会いたいと告げる。

 すぐにそれは了承され、俺はギルドの中へと案内された。

 向かう先は、ギルドの応接室。


 これで、ギルドにいる冒険者たちが俺を意識する必要はなくなった。


「受付嬢さんは……忙しいのかな」

「忙しい、と、思う……多分」


 自信なさげなクロに、そりゃそうだと同意する。

 俺と受付嬢さんは、これまでずっとギルドのカウンター越しに交流を続ける関係だったのだから。


「すいません、おまたせしました!」


 しばらくすると、受付嬢さんがバタバタと入ってくる。


「いや、こっちこそ忙しいところ申し訳ない」

「そんなことないです! 今はツムラさんのことが、何よりも最優先事項ですから!」

「そこまでか……」


 少し驚いてしまう。

 だが、正直驚きっぱなしではいられない。

 それだけのことを、俺はしてしまったのだから。


 とはいえ、それでも一息は着いてもらわないといけない。

 受付嬢さんが、急いで持ってきたお茶を、お互いいっぱいゆっくりと飲んでから――本題に入る。


「では、まずツムラさん、多大なご協力を感謝します」

「ああ」

「その上で、厚かましいことは承知の上ですが、頼みがあります」


 ああ、と二度うなずく。

 受付嬢さんは……



「……今回のダンジョンハザード、その核であるバトルオーガ達の親玉を、ツムラさんに討伐していただきたいのです」



 概ね、想像通りの依頼を俺に提示した。

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