第48話
とにかく、速攻だ。
速攻あるのみ。
この世界のダメージ計算は、まずATKがDEFを越えているのが前提。
その後、越えたATKとDEFの差に、使ったスキルや攻撃手段による補正をかける感じ。
……らしい。
魔物のステータスは見えないし、俺はダメージを受けたことがない。
クロや受付嬢さんの話を聞いた上での、推測だ。
その上で俺の攻撃手段として一番強力なのは、やはり火魔法である。
MPというリソースを注ぎ込む数値的な威力の増加は、やはり大きい。
それに加えて――俺は、他人と比べて魔法をイメージする能力が優れている。
治癒魔法なんて、初級で上級並の効果だと評判だ。
そしてそれは、本気を出した火魔法にも言える。
いまから、それをお見せしよう。
「――――」
オーガが振り返り、棍棒を向ける。
言葉はない。
研ぎ澄まされた剣のように、奴はこちらへ敵意を向けている。
「火よ」
「……魔法、使い過ぎダメ。どうする?」
俺が炎を生み出すと、クロが警告する。
速攻で倒すなら、火魔法を連打するしかない。
だが、それだと連戦ができなくなる。
「使うのは、一回だけだ」
「無茶」
そりゃそうだ。
でも、やり方はある。
イメージしていく。
すると、生み出された炎は針のように形を買えた。
赤いそれが、白へと色を変え。
オーガに向かって放たれる。
「避けられる!」
「大丈夫」
正面から放てば、当然避けられる。
だから、追尾機能をつけた。
同時に俺も飛び出す。
火が着弾すると同時に、殴りかかるのだ。
「――――!!」
オーガは攻撃を避けるが、火は弧を描きオーガへと向かう。
そして、目に着弾した。
「!!!!!!」
「目は、あらゆる生き物共通の弱点。瞼なんかでガードしても意味はないぞ! そいつは俺が考えられる限り、もっとも高温の火魔法だ」
白熱となった炎は、普通の炎とは段違いの火力を有する。
瞼くらいなら、貫通してしまうだろう。
そして、それ以外の場所で受けた場合は、そもそも炎がその部位を避ける。
当たるまで、敵の目を狙い続けるのだ。
これだけでも大ダメージだが――
「おらぁ!」
俺は、勢いよくオーガの頭に拳を打ち付ける。
相手の攻撃を受けることには、未だに苦手意識があるものの。
こちらから攻撃する分には、俺は遠慮なく人型魔物を殴れるようになっていた。
「ぐ、ぉ――」
オーガは数歩たたらを踏んで、俺はその度に顔を殴りつける。
正直、素人のパンチだから狙いは正確じゃないが。
それでも、顔という部位事態を殴り続けることに意味がある。
攻撃部位によるダメージ補正の話。
ただでさえ頭は重要な場所だから、ダメージが入りやすい。
そこに、目を焼かれた痛みが絶え間なく襲っているところへ、拳を叩き込む。
痛みに痛みの相乗効果。
それは、ATKとDEFの差が少なくとも、大きなダメージを与えるクリティカルヒットになる!
「ぉ――――」
そして、オーガは膝から崩れ落ち、消滅した。
ここまで一分もかかっていない。
十分だ。
「……ツムラの戦い方、ちょっと怖い」
「悪かったな。でも、勝利は勝利だ」
「うん、急ごう」
オーガを正面から倒せることは確認した。
ここからは、冒険者の救出を急がないと。
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