第47話
ともあれ、俺のやるべきことは変わらない。
「前の角、左。そこにいる」
「了解」
悲鳴はあちこちから聞こえてくる。
魔物たちの敵意は、もはや人間と遭遇していなくても周囲の悲鳴を察知してむき出しになるレベルだ。
俺は治癒魔法バフをすべてかける。
治癒魔法バフは速力増加以外にも、攻撃系ステータスの増加も可能だ。
防御系はちょっと筋肉ムキムキにした程度じゃ無理。
そうして、勢いよく角を曲がった先に――そいつはいた。
「げ……」
一言で言えば、そいつはオーガだった。
オーガ、言葉のイメージとしては、いわゆるオークをより凶暴にした感じ。
オークは作品によっては豚みたいな体系をしていることもあるが、オーガだと肉体が引き締まったイメージになる。
黒色の禿頭、耳は尖り牙は鋭い。
身長は三メートルくらいある。
筋肉ムキムキ、手には棍棒、腰蓑を巻いている。
そういう感じのアレだ。
「……バトルオーガ」
クロが補足してくれた。
バトルオーガ……面倒そうな名前だ。
何より厄介なのは、人型という点。
俺の一番苦手なタイプだ。
上層には、普通ゴブリン以外出てこないというのに。
「気をつけて、そいつ――」
「ォオオオオオオオオオオッ!!」
「悪い、聞いてる時間なさそうだ!」
オーガはこちらに気付くと、吠えながら突っ込んでくる!
俺は慌てて火魔法で迎撃する。
それは問題なく命中するが――
「オオオオオオッ!」
「……効いてない!?」
そのままバトルオーガが突っ込んでくる。
直線的な攻撃だ、ダンジョンが狭いと言っても回避できないものではない。
横をすり抜けるようにして、棍棒の薙ぎ払いを回避。
俺とバトルオーガが交錯する。
「そいつ……攻撃受ける時、ATKとMAG、半減」
「半減!?」
つまりこうだ。
この世界じゃ、DEFがATKを越えないとダメージにならないのに、攻撃が命中した段階でATKを半分にしてダメージ計算を行う。
相手のDEFが50だとすると、ATK120で攻撃しても実際のATKは60扱い。
そりゃ攻撃が通らないわけだ!
「バトルオーガ、倒すのに必要なレベル……40」
「ってぇと、平均3上がったとして……攻撃系ステータス120必要ってことか」
「ツムラ、ギリギリ」
だろうなぁ。
とはいえ。
「一応倒せないわけじゃないなら、どうにかなる」
というか、どうにかする。
なにせ、
「助けてくれ! 嫌だ! 死にたくない!」
「なんでバトルオーガがいるのよぉ!」
この地獄絵図みたいな、悲鳴が飛び交う場所で――どうにかできるのにやらないのは、レベリングどうこうの話だろ!?
もとより、この状況は受付嬢さんから、聞いていた通りのことでもある。
覚悟を決めるしかないだろう。
だから、こういう時に、敢えて言っておくべきことがある。
「それに――」
「それに?」
すぅ、と一息。
俺はできるだけ、強がりに見える笑みを浮かべて。
「これを解決すれば、女神様から経験値ガッポガッポだ! やらないわけには行かないだろうが!!」
そう、言った。
「……うん」
クロはそれを、なんというか少し優しげな……困ったような頷きで返すのだった。
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