第42話
「探知能力、必要なの解ってた」
クロの想像通り、俺がクロに頼りたかったのは、クロの魔物探知能力だ。
これがあることは、それだけで俺達にとっては大きなアドバンテージなわけだけど。
ただ不意打ちを防げたり、安心して外で野宿できる以外にも、使い方は色々だ。
「歴代の愛子、導いた妖精、色々な使い方したらしい」
それはもちろん、過去の転生者も解っている。
だから転生者達は、転生者特有のアイデアロールで様々な探知能力の活用法を生み出してきたはずだ。
そして、俺もまた。
「……でも、こんな使い方、多分初めて」
「そうか?」
「だってわたしの探知で、ひとだああああああ」
抑揚のない声が、ドップラー効果となって俺の耳に響く。
何をしているかといえば、走っているのだ。
全速力で、治癒魔法バフも使って。
向かう先は――
「次は?」
「あうー、左……」
クロの案内する先だ。
そこには魔物がいる。
敵意を持った魔物が。
――誰に?
もちろん、俺じゃない。
俺は高速でそっちに向かっているところだから、そもそも魔物がこっちに気付く暇はないだろう。
故に、敵意を向けられているのは――俺以外の冒険者だ。
「見つけた」
眼の前で、二人の冒険者が魔物に襲われている。
「邪ノシシじゃないか、こんなところにも出るんだな」
「……この階層で、一番強い」
そりゃそうだ。
俺でも一撃で倒せる相手じゃない。
「ちっ……なんだってこんなところに邪ノシシが。逃げるよヒーシャ」
「で、でもナっちゃん、どうやって……」
「しょうがないから、私が――」
少女二人が、強敵を前に逃げようとしている。
でも、それは難しいだろう。
どちらか一人が囮にならなければ行けないはず。
ふたりとも無事助かるには、誰かの助けがいる状況。
つまり。
「――ちょいと失礼」
俺が、割って入ってもいいということだ。
事前に火魔法をありったけ展開した上で、勢いよく邪ノシシに飛びかかる。
レベルの上昇、装備品。
諸々の成長も相まってこの間邪ノシシを倒した時よりも、高火力な魔法の雨が俺の飛び蹴りと一緒に邪ノシシを襲う。
確かに俺でも一撃じゃ倒せないが、手数で圧倒すれば問題はない。
何より、魔法は火の玉一発一発がMPをフル投入した最大火力だからな。
厄介な相手でも、この階層なら押し負けることはない。
邪ノシシは、そのまま消滅した。
「横から失礼、素材とかは自由に持ってってくれ。じゃあな」
「え? あ、え――」
というわけで、目標はクリアだ。
さっさと挨拶をして、その場を立ち去る。
これが俺のレベリング方法。
辻人助け。
クロの魔物探知を利用し、他の冒険者が襲われているところに駆けつける。
その冒険者たちが助けなしで切り抜けられるならよし、そうでないなら助ける。
基準は、助ける冒険者たちを放っておくと死人が出そうな場合、だ。
これのいいところは、冒険者を助ける必要がなかった場合、それを放置しても経験値が入る点だ。
善行にも色々な種類がある。
余計なお世話を焼かないというのも、善行の一つだ。
まぁ、流石に入ってくる経験値は10点と微々たるものだけど。
とにかく、俺はこうして効率よく魔物を倒しつつ、レベリングを行っていた。
死人が出そうな窮地を助けると、手に入る経験値の量は膨大だ。
具体的に言うと最低500点。
結果、俺のレベルは――数日もしないうちに23へと到達していた。
そういえば、さっきの二人組の片割れ、どっかで声を聞いたことがあるような……
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