3.レベリングし、人助けをするレベリング中毒者

第40話

 ついに、その日は来た。

 待ちに待った日だ。


「ダンジョンに行くぞ!」

「わくわく」


 俺達は、ダンジョンの入り口までやってきていた。

 入り口は街の外れにあり、周囲を鎧を着た人たちが守っている。

 彼らは街の警備兵だそうだ。

 ダンジョンの中から魔物がでてこないか見張っているらしい。

 後は、ダンジョンに入った人間と出てきた人間の数の管理とか。

 まぁ、ダンジョンのスタッフだな、つまり。


「ダンジョンに入りたいんだが」

「お待ちを、冒険者カードを提示してほしい」


 なんてやり取りをして、中に入る許可を得る。

 俺の他にも数人の冒険者が、中に入るために受付へ集まっていた。

 時刻は朝の十時、冒険者の活動開始時刻としてはちょうどいい頃合いだ。


「では、冒険者ツムラのダンジョン侵入を許可する。気をつけて探索するように」

「ありがとう」


 そうして、中に入る。

 今回潜るダンジョンは古めかしい遺跡だ。

 ダンジョンの形にはいくつか種類がある。

 洞窟型だったり、遺跡型だったり。

 溶岩がぐつぐつ言ってたり、凍りついていたり。

 まぁ、ゲームにおけるダンジョンとそう違いはない。

 俺のイメージするダンジョンが、そこにはあった。


 ただ、入り口は少し特殊だ。

 中に入ると、広い空間に魔法陣が一つある。


「これに乗る。探索したことのある階層、イメージ。イメージした階層に転移する」

「便利だな」


 といっても俺達はこれが初探索だから、行ける階層は地下一階だけだ。

 後ろに他の冒険者もいるので、さっさと魔法陣に入る。

 すると魔法陣が光、俺達はダンジョンの中に飛ばされていた。


 そこは前後に道のある、通路の真っ只中だった。

 転移する階層は選べるが、転移する場所までは選べないらしい。


「よし、そっちの調子はどうだ?」

「バッチリ」


 クロの声が、俺の耳元から聞こえる。

 さっきから人のいる場所で会話していたが、現在クロは妖精状態である。

 どうやって話をしていたかと言えば――俺の衣装が少し変化しているのが原因だ。

 フード付きのマントを一つ購入したのである。

 このフードにポケットを作って中にクロが入っている、という感じ。

 これで、小声ならお互いの間だけで言葉を交わせる感じだな。

 独り言の多い人間になるが、まぁある程度気をつければ問題ない。

 ちなみにMIDが+3されている。

 ありがたい。


「今日は軽く探索するだけの予定だ、転移魔法陣を探そう」

「ん」


 基本的に、ダンジョンの階層は入り口のアレと同じ転移魔法陣で区切られている。

 転移魔法陣にたどり着くと、一つ下の階層に進むか、入り口を含む探索したことのある階層に進むかを選べる。

 今回は、そのまま入り口に戻って直帰する予定だ。


「……早速だけど、魔物が来る」

「了解」


 ――わざわざマントを買って、クロにそこへ入ってもらったのは、クロの探知能力を利用したいからだ。

 これがあるだけで、不意打ちを気にしなくていいのは非常にアドバンテージである。


 現れたのは、角の生えたウサギモンスター。

 ――ウサギ先生だ!

 色が赤いので、多分ボブゴブリンみたいな上位種だろう。

 だが、ウサギ先生には変わりない。


 俺は、再び先生にお世話になるという意味も兼ねて、


「火よ!」


 今持てる全力で、先生に魔法を放つ。

 ウサギ先生は回避しようとするものの、追尾性能により避けきれず直撃。

 一撃で倒された。


「このあたりの魔物、ツムラなら瞬殺」


 そして、その時は来た。

 俺はこの時を待ち望んでいたのだ。

 何故か? 言うまでもない。


 ――レベルが、上がった。


「レベルが、上がった」

「うん」

「レベルが……上がった!」

「そうだね」

「上がったぞ!!!!!!!!」

「……」


 クロは、それ以上何も言わなかった。

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