第35話
翌日、目を覚ますと経験値が500点入っていた。
「あの治療院の活動がそんなに評価されるのか……」
「ツムラ感謝いっぱいされた、当然」
まぁ、そりゃそうなんだが。
そうなんだが……
「稼ぎてえ……」
めっちゃいい稼ぎがそこにある。
冒険者と関係ないところでクソほどレベリングができる。
うず……
「いや、だめだ。この稼ぎを常用してると治療院のお偉方コース一直線だ!」
「……それでも、よくない?」
「だめだ! 転生……愛子は自由でなくちゃだめなんだ!」
確かに、めちゃくちゃこれは稼ぎとして効率がいいだろう。
だがどう考えても、SUGEEされすぎて冒険者としてではなく治癒魔法の使い手として偉くなってしまうパターンだ。
それじゃあ好きにレベリングもできなくなってしまう!
「富と名誉、冒険者より稼げる、絶対」
「じゃあ逆に聞くが、クロは俺が冒険者としてあちこちを旅するのと、治療院の偉い人になるのだとどっちが一緒にいて楽しいと思う?」
「む……」
クロはしばらく悩んで……
「ツムラ、治療院で何の検証してた?」
話を切り替えた。
解ってもらえて助かる。
「治癒魔法は、身体能力の強化に使える」
結論からいうとこうだ。
治癒魔法は体内を魔力で正常に修復する魔法。
だったら、過剰に回復させれば、肉体の機能はより強化されるのではないか?
ようは、ドーピングだ。
「というわけで森にやってきたぞ」
「おー」
クロの抑揚が薄い声が響く。
ある程度饒舌になったけど、相変わらず感情は薄いな。
「まずは実際にやってみよう。癒やしよ……」
すると、脚に魔力が集中する。
治癒の光が脚に宿り、それっぽくなった。
ちなみに、この魔法は過剰に回復させるせいで脚にダメージが入るリスク付き強化みたいな魔法なわけだが。
その脚に入ったダメージも、魔法で回復できるので後遺症はない。
便利だな。
「早くなってそう」
見た目は大事。
そして、そのまま全速力で走ってみる。
「わー」
クロが妖精の状態で俺の服にひっついて、声を上げている。
ぱたぱたと揺れるが、楽しそうだ。
「……どうだ?」
「ん」
しばらくして、足を止めクロを見る。
「……違い、わからない」
「……だな」
正直、元も早いからよくわからなかった。
なので道具を使ってみる。
ずばり、時計だ。
スマホのではない、奴さん電池死んだよ。
「マナクロック、このために?」
「そうだな、ちょっと高かったけどしょうがない」
前に話したことを覚えているだろうか。
MPは一時間に1回復する。
だったら、MPの回復を時間の基準にできる。
多分、かつて転生者の誰かが思いついたのだろう。
それを利用したのがこのマナクロック。
この世界の時間の概念は、このマナクロックによって保証されていた。
「ここからここまで走るから、タイムをクロが測ってくれ」
「わかった」
というわけで、走って測ってみる。
魔法のありなしで違いを図ると――
「魔力あり、なしと一秒違う」
「効果ありだ!」
仮説は正しかった。
……で、数値にするとどれくらい違うんだ?
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