第32話

「……どうすればいいと思う?」

「わからない……」


 途方に暮れてしまった。

 あの後、ゴブリンは普通に倒した。

 現在は薬草をぷちぷちしている最中である。


「本人の性格的な問題、どうしてもあるから」

「慰めてくれてありがとうな……まぁ、実際その通りなので何も言えないんだが」


 とりあえず、俺に盾タンクは無理だ!

 だって怖いもん。

 ただ、これが自分から殴りかかったり、四肢を持たない相手なら問題ないんだよな。

 前者は少し慣れが必要だったけど、数体ゴブリンを倒したら慣れた。


 小心者な性分である。

 昔からそうだったが、現実に突きつけられると少し凹む。


「戦い方、工夫する、とか」

「そうだなぁ、回避盾とか?」

「回避盾?」


 回避盾の概念がないのか?

 少し意外だ。

 転生者さん、そういうの好きそうなイメージあるけど。


「敵の攻撃を引き付けて回避することで、味方に攻撃が行かないようにするんだ」

「理解」

「回避盾って言わないだけで、概念はある感じか」


 納得である。


「でも問題がある」

「どういう問題だ?」

「それ、分類上はアタッカー」


 まじかよ。

 でもそうか、この世界アタッカーのくくりが広いからな。

 マジックユーザーも、ソードマンもアタッカーだ。


「ってかそうなると、今度はそもそもタンクが必要なのかって問題が」

「普通、タンクはタンク用のスキルを持ってる。それで攻撃を引きつける」


 あー、ヘイトをスキルで集めるのがタンクの仕事ってことか。

 そうなると、スキル事態はマジックユーザー構成の俺は不利だな。


「ツムラ、スキルだけなら後衛のアタッカー兼ヒーラー」

「そうすると、今度はせっかくの防御ステータスを捨てることになるわけだが……」


 やっぱり、この防御力は惜しいものがある。

 正直ここまで向いてないと、前衛張ってるときの保険くらいにしか使えそうにない。


「一番有効な使い方は……俺以外の前衛をパーティに入れないことか」

「……多分、そうなる」


 そうすれば、攻撃は自ずと俺に集中する。

 それを防御力で受けながら戦うのが、一番無難なところだろう。


 でもそうすると……


「……今度は組めるパーティの幅がぐっと減っちまうんだよなぁ」

「むむむ」


 理想でいうと、俺は色々なパーティの助っ人として参加したいのだ。

 その方が、色々な人間相手に善行を積めるからな。


「味方に攻撃が届かなければ、それが一番……」

「ふむ……」


 と、クロがそんな事を言う。

 俺はその言葉に、少し考えた。


 俺の問題は、俺自身が性格的に攻撃を受けれないこと。

 だったら、こう考えればいいのではないか?

 攻撃を受けなければいいさ、と。


「……思いついた」

「?」


 そう言って、俺は立ち上がる。

 薬草採取も、ちょうど必要数量を集め終わったところだ。


「試したいことがある。もう一度、ゴブリンを探そう」


 かくして、俺は再びタンクに挑戦するのだった。

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