第29話

「ほお、新人にしちゃ随分はっきりした買い物だな」


 と、ドワーフの店主に言われた。


「はい、ステータスはタンクが向いてるんですが、他にも適正があるので」

「なるほど、ステータスも優秀ならおつむもよく出来てるってわけだ」


 褒め方下手くそか?

 いや別に、俺は気にしないけど。

 まぁ人付き合いは苦手なんだろうなぁ。

 クロと同じ匂いがする。


「期待の新人にゃ唾を付けとかなきゃなあ。ちとまってろ」


 といって、店主は奥に引っ込んでしまった。


「ぎゃー! 父ちゃん何いきなり入ってきてんのさ!」

「てめぇナフ! また工房で遊んでんのか! さっさと仕事に行ってきやがれ!」


 ――なんか奥から聞こえるぞ。

 店主が扉を閉めずに入っていったから、丸聞こえだ。


「娘さんかな」

「ぽい」


 なんてクロと話しつつ。

 店主はいくつかの手袋を持って戻ってきた。

 うち一つを、俺に差し出す。


「あー、聞こえてたか? わりいな」

「お気になさらず。それで、これは?」

「マギグローブっつう武器種の武器だ。素手で戦うためのグローブでありながら、杖の代わりにもなる」


 つまり、ATKとMAGがどっちも上がる武器ってことだな。

 差し出されたのをみてみたら、ATKが+5されて、MAGが+3される武器だった。


「値段は200G」

「MAG+3されるのに、随分安いな」

「魔法を使う前衛ってのは、珍しいからな。それに、杖の機能はそこまでつけるのに金はかからん」


 ふむ、ただのグローブを買うよりはこっちがいい、と。

 とはいえ俺でなければ需要もなさそうな武器だ。

 表に並んでないのも無理はない。


「これを、そこのグローブと同じ値段で売ってやる」

「いいのか?」

「かわりに、こいつを見ていけ」


 そういって、店主はケースに入ったマギグローブを見せてくる。

 防犯のためなんだろうが、随分厳重だな。

 何々?


「サーチハンドっつうグローブだ、効果は見てみりゃ解る」


 表示された効果は――


 『サーチハンド』

 種別:武器(マジックグローブ)

 効果:ATK+30、MAG+40

    装備時、ATKMAG


「――は?」


 つっよ。

 ってかATKとMAGを測定できる!?

 これ、俺が持ったら、完封できる敵を判別できるぞ!?

 ほぼ無敵じゃないか!


「タンクにとっちゃ、敵の攻撃ステータスをサーチできるのは最上級のアドバンテージだ。お前さんも解るだろ?」

「あ、ああ。解る、解るさ……だがこれ、いくらになるんだ?」


 絶対高いだろ。


「――20万G」


 に、にじゅっ。

 ウサギ先生たちを一年虐めないと買えない額じゃないか!


「こいつを、お前のために取っといてやる。欲しかったら、いつでもいいな」

「……店主」


 いや、なんというか。

 人付き合いは苦手、という印象だったが。


「商売、上手いな?」

「ああ、それで食ってるからな」


 ――伊達に、一国一城の主じゃないということか。

 結局、俺はマギグローブを一つ購入し、店主にサーチハンドの取り置きを依頼した。

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