第28話

 防具の重要性は理解した。

 そして値段を見て、納得もした。


 ここに、ATKが10増える『鉄剣』とDEFが10増える『鉄鎧』がある。

 それぞれの値段は鉄剣が350G、鉄鎧が2000Gだ。

 鎧のほうがめちゃくちゃ高い。


 ステータスの重要性もさることながら、単純に使ってる鉄の量も段違いだからなわけだが。

 それがすなわち防具の重要性も表しているわけで。


「とすると、悩むな、防具選び」


 現在、俺の手持ちは約8000Gである。

 宿屋は一泊で一人500Gがここの相場だというので、使える金は7000Gが限度。

 普通に考えて、5000Gくらいに留めておくべきだろう。


「そう考えると、鉄鎧はマストだよな」


 鉄鎧はいわゆるフルプレートアーマーだ。

 防具には二種類ある、部位に装備する防具と、鉄鎧のような全身装備。

 とにかく防御を上げることを考えるなら、後者だ。

 初心者向け装備の中から、効果の高いものを選んでいくと最終的にDEFは15増える。

 が、お値段は4500G。

 鉄鎧の倍以上する。


 だったら、最初から鉄鎧を買って残りは武器や他のアイテムに回した方がいい。

 多分、あの店主さんにタンクがやりたいって話したらそういうことを話してくれるんだろうなぁ。

 と、ぶっきらぼうだけど面倒見は良さそうなドワーフ店主の顔を思い出した。



 ――が、それは普通の冒険者の話。



「俺は、正直鉄鎧は勘弁だな」


 たとえタンクをするとしても、だ。

 ステータスがすでに十分高いため、そもそも防具がそこまで重要ではない。

 安全マージンという意味では意義があるものの、それなら鉄鎧でなくてもいい。


「ん……鉄鎧は動きにくい。動きの感覚が変わっちゃうから、使うならずっと防具が鉄鎧になる」

「そんなにか」


 装備の手間も、冒険中に野宿したりする時の手間も大きい。

 せめてゲームみたいにワンタッチで装備できれば違うんだろうが。


「動きやすさと最低限の防御力を重視するなら……これ」

「皮の胸当て……DEFが+4の400Gか」

「素材が安く手に入るから、防具の中では破格の値段になる。すごい」

「すごいな」


 それこそ、異世界モノでよく見る装備だ。

 軽装の戦士は、だいたいこういうのを身に着けている。

 鎧はこれにしよう。

 他にも、関節を守るプロテクターを同じく400Gで購入した。

 こちらはDEF+1。


「んで、俺はもう一ついい装備があると思う」

「どんなの?」

「これだ」


 そういって、あるものを俺は指さした。

 鉄の盾である。

 『鉄盾』、鉄シリーズの一つ。


 本来なら鉄鎧を着たタンクが、更に防御力を高めるために使う。

 防具としてのニッチさは鉄鎧以上だろう。

 が、値段1000Gに対してDEF+8と非常に破格だ。


「俺なら盾を構えながら魔法で攻撃できる。最悪捨てて殴りかかれる。タンクをするならこれが一番だろう」

「……買い物に失敗しても、鉄鎧よりダメージが少ない?」

「そういう理由もある」


 受付嬢さんにタンクをおすすめされたからか、意識はタンクに寄っている。

 とはいえ、武器も最低限必要だ。

 無難オブ無難、鉄剣を一つと、これまで拳で戦ってきたので、ATKが+5される皮のグローブを購入した。

 合計500G。

 防具と合わせて、2300Gの買い物となった。

 予算に対しては少なめだが、まぁこんなもんだよな。

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