第23話
ついに街に到着した。
ようやくだ、結構かかったな……
人が行き交っている。
俺にも多少視線を向けられているが、気にされた様子はない。
ちょうどいい服を選んでくれた商人に感謝だな。
「にしても、町並みがホント異世界って感じだ」
しげしげと眺めながら歩く。
隣にクロの姿はない。
彼女は現在俺の荷物袋の中にいた。
大丈夫なのか? と心配になるが大丈夫らしい。
「妖精は常に飛んでるから、バランス感覚完璧。多少振り回されても、眠ってられる」
とのこと。
ただ、荷物袋の中にスライム枕を設置してくれと言われた。
よっぴどアレを気に入ったらしい。
「アレさえあれば、百年眠れる。私を起こせるのは、美味しい朝食の匂いと、魔物の気配だけ」
とドヤ顔で言っていた。
まぁ、魔物の気配でちゃんと起きれるなら、問題はないんだろう。
ともあれ、街に入る以前にクロから聞いていた道順に沿って街を進む。
向かう先は冒険者ギルドだ。
もはや冒険者とギルドに関しては説明不要だろう。
この世界でも、その仕組は変わらない。
そして、しばらく歩くと目的の場所を見つけた。
外観は他の建物とそんなに変わらないが、入り口に剣と翼のマークが掲げられている。
アレがギルドの象徴らしい。
ギルドを作った、愛子とその相棒である妖精を表しているのだとか。
この世界のギルドが勝手知ったるものである理由が、判明したな。
たのもー。
口には出さず、心の中だけでそう言って中に入る。
視線を感じた。
視線は雄弁に語っている。
「新人だ、どこかの田舎から出てきたのか?」
だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
なんていうか、よくある展開ならもう少し剣呑か、もう少し目立たないものじゃないか?
普通程度に目立っていて、普通程度に剣呑さがある。
まぁ、俺は見た目は地味な青年だしそんなものだろう。
クロも、今は袋の中で眠っているしな。
「いらっしゃいませ、どのようなご要件でしょう」
「冒険者登録を頼みたいんだが」
早速、受付嬢に声をかける。
これまたよくある展開、俺が冒険者登録を頼むと、受付嬢はギルドの説明をしてくれた。
曰く、ギルドは街の何でも屋。
魔物の退治から下水道の掃除まで、依頼さえあれば何でもやるのがモットーだとか。
「ただし、依頼を達成することで経験値が得られるものに内容は限られるます」
「なるほど」
「あくまで、冒険者の意義は女神様への信仰を示すことですので」
経験値を得られる行動、って善悪の基準として優秀だよな。
と、それを聞いて思った。
「それでは、ステータスの登録を行います」
――来た。
テンプレ展開!
ここでステータスをひけらかし、SUGEEするのが転生者の醍醐味!
「登録されたステータスが他者へ本人の承諾なく開示されることはなく、ギルドは登録したステータスを用いて冒険者の方に不利益を与えることはありませんのでご安心ください」
「なるほど」
「ステータスには、犯罪歴等の経歴も記載されます。それを確認するためのものです」
不利益な情報も記載されるのか……いや、問題はないだろうけど。
ユニークスキルとかどうなんだろう。
まぁ、俺のユニークスキルはステータスを見せた時点で隠せないものなので、どうでもいいけど。
「こちらの水晶に手をかざし、ステータスオープンとお願いします」
「ああ、――ステータスオープン」
そして、その時は来た。
この日のために、さんざん脳内で練習してきたあのセリフを使う時だ。
「……三桁?」
俺、また何かやっちゃいま――
「…………すいません、このHPはなにかの間違いじゃないですか? 低すぎます」
――したかねぇ!?
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