第21話
「ツムラ、終わった?」
ゴブリンを倒し終わると、どういうわけかクロが人間モードで出てきた。
人が苦手だし、話がややこしくなるので出てこないかと思ったが。
どうしたんだろう。
「ああ、終わった。どうしたんだ?」
「ん……用事がある」
なにか考えがあるんだろう。
ともあれ、今は目の前の商人だ。
「本当に助かりました……なんとお礼を言えばよいか……」
「いや、いい。困っている人を助けるのは当然のことだ」
「女神様に感謝いたします」
謙虚にしていると、女神からいっぱい
「ところで、お二人はどういったご関係で?」
「あー……まぁちょっと訳ありでな」
「なるほど……」
意味深に濁しておく。
相手は商人、機を見るに敏が鉄則だ。
踏み込んでは来ないだろう。
多分、貴族令嬢とその執事みたいに見えているはずだ。
クロに聞いた話だが、俺のスーツはこの世界の礼服で通るらしい。
過去にもスーツで転生してきた転生者がいたんだろうな。
クロの服装も、令嬢のドレスといえば通る。
「しかし、何のお礼をしないというわけにも行きますまい」
「お礼というなら、ものは相談なんだが」
「何なりとおっしゃってください、私にできることならば」
「……買い取りを頼めないだろうか」
具体的には、大量の肉と皮。
あとゼリー。
アイテムボックスから、それらを取り出す。
「おお、アイテムボックスですか、いいですなぁ」
「まぁ、ありがたいことに」
アイテムボックスはレアスキルだから、俺以外の人間も持ってることがある。
レアスキルとは女神の恩寵、ユニークスキルは加護だそうで。
クロから確認済みだ。
「ともあれ、これだけの数ですと……そうですな、総額1万
でたなG、お金表記の定番。
この世界だとゴルトというのか。
「買い取ってくれるか?」
「もちろんです。魔物肉は腐りませんし、皮はど様々な用途で使えますから」
嬉しそうな商人から、お金をもらう。
金貨、銀貨、銅貨があった。
ここらへんは……まぁ面倒だから全部G表記でいいよな。
「ん、欲しい物がある」
「おや」
そこでクロが声をかけた。
用事とは、買い物のことだったのか。
「動きやすい服がほしい。それと、アイテムボックスを隠せる荷物袋」
「おお、そうですな。そのお洋服では、町中だと目立ってしまうでしょう」
「それと――」
それと?
「――美味しそうな匂いがする。それ、ほしい。ほしいほしいほしい」
ずいずいずい。
ちょっと距離を取っていたクロが、どんどんこっちに近づいてくる。
……本命はそれか!
「……いい?」
「ああ、問題ないよ。せっかくだ、俺の分ももらおうかな」
「ええ、かしこまりました」
服と荷物袋は確かに必要だ。
こういうところは、クロがいてくれるととても助かるだろう。
その分のお駄賃として、美味しいものを買うのは自然なことだ。
……チラッ(女神様の方を見る)
「では、ご用意しますので、そちらをお食べなってお待ちくだされ」
ちなみに、そう言って出てきたのはチョコだった。
転生者が伝えたのか、この世界独自の料理なのか、物持ちがいいので便利なんだろう。
中には、この世界特有の胡桃みたいなのが入っていて、歯ごたえがよく美味しかった。
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