第17話

「レベル、とステータス、は……女神様が、齎した」


 クロ曰く、この世界にある時、魔物と呼ばれる脅威が現れたという。

 魔物は人々を害し、苦しめた。

 それを不憫に思った女神が、魔物と戦う手段としてステータスを与えたという。

 通りで人を辞めたスピードやパワーを手に入れても、うまくコントロールできるはずだ。

 女神はこの世界にステータスというシステムを新たに加えたのだろう。

 俺の身体能力は、そのシステムに沿って動いているというわけ。

 ……よくバグらなかったな?


「女神様の、加護で、人々は魔物と戦えるように、なった」

「じゃあ、女神はレベルを上げてほしくてステータスを与えたんじゃないか?」

「わからない、女神様はある日突然、人々にステータスを与えたから」


 なんか一気に胡散臭くなってきたな?

 いやでも、ステータス事態はこの世界で長年運用されてるわけで。

 愛子――つまり俺のような転生者も過去には複数いる。

 そういう転生者が、ステータスに関する検証をしなかったとは思えない。

 その上でステータスが今も変わらず運用されているなら、大きな問題はないんだろう。

 とはいえ、一応気になるので、ステータスの真実を探求するのはサブ目標の一つとしておこう。


 今の問題は、女神が何の前触れもなく、見返りもなくステータスを与えたことだ。


「人々は困った。女神様の、意図が読めない」

「ああ、なんとなく見えてきたぞ? それで、人々はステータスの加護の見返りが、自分を信仰することだと解釈したわけだ」

「そう」


 ステータスを与えるから、自分をもっと信仰しろ。

 とか、そういう理由を付けないと人々は安心できなかったんだろう。

 理由のない善意とか、人間が一番困惑する行為だ。


 そして、信仰を体現する上で最もわかりやすい証になったのが――


「――レベル、か」


 だから、レベルは上げるものではなく、上がるもの。

 魔物を倒す以外の行為でもレベルが上がるのも、その考え方に拍車をかけただろう。

 これが、魔物を倒すことでしか経験値を稼げないなら、こう考えたはずだ。

 魔物を倒す力を与えるかわりに、その力で魔物を倒して世界を平和にしろ……と。


「わかったよ、クロ。教えてくれてありがとう」

「ん……こっちこそ。助けてくれてありがとう。あと……」

「あと?」


 クロは、少し恥ずかしそうにためらってから言う。



「クロと出会ってくれて、ありがとう」



 ……とても、嬉しそうにそういった。

 なんだろう、やたら好感度が高い。

 俺が待たせてしまったせいで、クロは危険な目にあったのに。

 とはいえ、お礼を言われるのは悪い気分じゃない。

 何より、こうすることは俺にもメリットがある話だからな。


 女神の話を聞いていて、ある推測がたった。

 それは、経験値を貰える行動についてだ。

 魔物を倒す、何かを作る、他にもう一つ。


 そしてその推測は、翌日の朝に証明されることとなる。


 NAME:ツムラ

 LV:21

 EXP:4000(NEXT:1910)

 HP:115/115

 MP:110/110

 ATK:105

 DEF:105

 MAG:105

 MID:105

 AGI:105

 SKILL:『ステータス上昇均一化』『火魔法:初級』『治癒魔法:初級』『水魔法:初級』『アイテムボックス』


 レベルが一つ上がっていた。

 原因は、妖精を助けたことだろう。

 助けた際の邪ノシシが原因……ではない。

 妖精を助けたことそのものがレベルアップの原因だ。

 つまり。


 経験値を手に入れる方法は三つある。

 魔物を倒す、何かを作る。

 そして――人助け、善行。

 言い換えれば、を達成すること。

 それがこの世界で経験値を集める、3つの方法だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る