第9話

 兎狩りと平行して、俺は拠点の改築も進めていた。

 これも貴重な経験値だ。


 まず行ったのは、スライムベッドの改築だ。

 草を敷き詰めるだけというのも、それはそれで悪くないけれど。

 俺はやっぱりふわふわのベッドが好きだ。

 その点、ウサギ先生の皮は非常に手触りがよく、寝転ぶとそれだけでもいい感じになる。


 まぁ、これ事態はこれまで使っていたスライムベッドの上に皮を乗せるだけなのだけど。

 ここで一つ別のものも作ってみた。

 スライムゼリーを皮に積めて、縛る。

 何ができるかといえば、枕である。

 寝てしまえば寝るときの態勢なんて関係ないけれど、寝るまでにはひと工夫がいるこの世界。

 枕の存在は、それを助けるマストアイテムだ。


 手触りはふかふかでありながら、体重を預けるとどこまでも沈み込んでいくような。

 ああ、これぞまさしく……


「人の生活……文明……」


 翌日、手に入ったEXPは「30」点だった。

 ベッド単体だと「20」点だったので、合計50点。

 中々悪くない採点だけど、皮を敷き詰めることのほうがベッドを作ることよりも点数高いんだな、とかどうでもいいことを考えるのだった。


 次に着手したのは、人としての生活の基本。

 身だしなみである。

 というのも、これと前後して俺はあるスキルを手に入れたのだ。

 具体的に言うとこう。


 NAME:ツムラ

 LV:15

 EXP:1050(NEXT:150)

 HP:85/85

 MP:80/80

 ATK:75

 DEF:75

 MAG:75

 MID:75

 AGI:75

 SKILL:『ステータス上昇均一化』『火魔法:初級』『治癒魔法:初級』『水魔法:初級』


「水魔法が来たぞ! レベルも上がった!」


 前回から2レベルあがって、ついにレベル15だ。

 そして手に入ったのは、水魔法だ。

 説明はこう。


 『水魔法:初級』

 種別:水魔法

 効果:己が内なる魔力を解き放ち、水属性の魔法を放つ。初級限定。


 火魔法とほぼ同じじゃないか!

 もう少しひねりを入れろよ、フレーバーテキストに気を使えよ!

 まぁ、気を使った結果腐らない新鮮肉なんてものが生まれるわけで。

 変な解釈の余地はない方がいいのかもしれない。


 いやでも、己が内なる魔力を解き放ち、ってテキストはなにかに使えると思うんだよな……(TRPG脳)


「まぁなんにせよ、風呂とシャワーだ!」


 これまで、その二つがなかったことで俺の身体は最悪の状況に陥っていた。

 ひげも伸ばし放題、臭いだって自分のものだから耐えられるけど、他人に嗅がれたら俺はそのまま死んでしまうだろう。

 だが水魔法なら、これを解決できる!


 といっても、風呂場やシャワーを作るには技術も材料も足りない。

 俺にできることといえば――


 まず、空に炎の弾を生み出し浮遊させるイメージで火魔法を使う。

 次に、その上から水魔法を水を降らすイメージで使う。


 こうすることで、簡易シャワーを作るのだ。

 炎を通過した水元々温かいイメージで行使したのもあってかいい感じに生ぬるく、心地よい。


「ああ、今この瞬間、たしかに俺は生きているんだなぁ……」


 などと感じ入ってしまうのだった。

 なお、これのEXPは「20」点だった。

 多分、風呂やシャワーなどを完成させると「30」点になるのだと思う。

 魔物を倒す以外の方法で得られるEXPの法則が、なんとなく解ってきた気がした。

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