第2話

 まずはスライムより始めよ。

 とは、高名なレベリング中毒者の言葉だ。

 今俺が考えたけど。


 スライムといえば異世界の定番。

 誰もがよく知る国民的最弱モンスター。

 当然、この世界にもスライムはいた。

 森の中を探索していると、ぴょんぴょん飛び跳ねるヤツがいたのだ。

 顔はなかった。


 いきなりスライムかよ芸がねぇなと思うかも知れないが。

 いきなりスライムには、それなりに合理性があるのである。

 なにせスライムには手足がない。

 飛び跳ねるだけで、動きも読みやすい。


 これがゴブリンだったら、手に武器を持ったり、二足歩行で俊敏に動いたり。

 手がつけられない。

 すくなくとも、俺みたいな元一般人が正面からやり合うべき相手ではない。


 この世界のスライムは、動きも緩慢だ。

 飛び道具の類もなさそうで、倒してくれと言わんばかり。

 早速俺は、スライムを倒すことにした。


「ついでに火魔法のテストだ。まずどうやって出すかってところからだが」


 スライムに気づかれない位置に陣取って、手をスライムに向けてかざす。

 倒すついでに魔法を撃ってみようというわけだ。

 火魔法の説明文によると、自分の中に魔力はあるらしい。

 MPもあるし、MAGもある、魔力がある事自体は間違いないだろう。

 なので後は、それをどう撃ち出すか。


「出ろ……出ろ……炎出ろ……」


 口に出してみる。

 何も起きない。


「……」


 心のなかで、炎を指先に灯すイメージを浮かべる。

 イメージのために目を閉じる。

 しばらくそうして、変化はない。

 これはダメか? と目を開けると――指先に火が点っていた。


「できた!」


 炎が熱くないので気付かなかったのだ。

 自分の出した炎が、自分を傷つけることはない、ということかもしれない。

 何にせよ、成功である。


 要領をつかめば簡単だった。

 魔法はイメージが大事、というのは創作にはよくある。

 自分が魔法を使ったことはないが、魔法を使ってみたいという願いは人一倍だ。

 オタクだからな。

 その願いが、イメージにこもっているのだろう。

 火魔法を使いこなすことは簡単だった。


 さっそくスライムに撃ってみる。

 アレだけ騒いだのに、向こうはこっちにまったく気付いていない。

 なんて都合のいい最弱モンスターか。


「くらえ!」


 火球をスライムに向かって放つイメージ。

 イメージ通りに、火球はスライムへと寸分違わず向かって言って、ヒット。

 スライムは吹っ飛び、しばらくすると消滅した。

 後には、なんか粒のようなものが残っている。

 倒すと消滅してドロップアイテムを残す仕様か、楽で助かる。


 何にせよ、


「勝利だ!」


 嬉しかった。

 誰もいない状況で、頼れるのは自分とこの火魔法だけ。

 不安が一気に吹き飛んだのである。


「そうだ、ステータス……オープン」


 冷静になったので、ステータスのことに意識を向ける。


 NAME:ツムラ

 LV:2

 EXP:10(NEXT:20)

 HP:10/20

 MP:7/15

 ATK:10

 DEF:10

 MAG:10

 MID:10 

 AGI:10

 SKILL:『ステータス上昇均一化』『火魔法:初級』


「っっっっしゃあ!」


 上がってる!!

 レベルが!

 上がっている!!!


 嬉しいとかそういうレベルじゃなかった。

 俺は狂喜した。

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