第20話 グラルドルフへの帰還
光の粒子が消え去った後に、一つのアイテムがドロップする。
「これが【神聖結晶】……」
【深淵の帰還者】がドロップしたのは、破魔のアミュレットの素材となるキーアイテム、神聖結晶だった。
これがあれば、あとは
偶然とはいえ、アニエスとはもう出会っている。グラルドルフに戻って、アニエスの工房に行けば合成してもらえるはずだ。この間の
「……やりましたね、クロード」
俺がしみじみとアイテムを眺めていると、シンシアが隣にやってきた。
「ああ。姉さんのおかげだよ」
「いえ。わたし一人では勝てなかったでしょう。クロードが頑張ったからですよ」
俺の頭を慈しむように撫でるシンシア。……そうか、俺も頑張ったよな。
「さて、早く戻りましょう。メリアも待っていますから」
「……そうだね」
抱きつき攻撃を覚悟していたのでやや肩透かし感があるが、シンシアの言うことはもっともだ。
シエルも待っていることだし、早くグラルドルフに帰らないとな。
◇◇◇
その後メリアと合流した俺たちは、ダンジョンボスを倒すと現れる帰還装置でダンジョンから脱出した。あの道のりを歩いて戻るのは大変だったから助かる。
「にしても、お前たちめちゃくちゃつえーんだな! あのボスをたった二人で倒すなんて!」
「メリアの索敵のおかげで体力を温存できたからな。俺たち二人だけだったら厳しかったかもしれない」
「そ、そうか。……役に立てたならよかったぜ」
俺がメリアを褒めると照れくさそうに鼻を掻く。実際、ボスに全力で挑めたのはかなり大きい。
「それじゃ、アーカニアに帰ろう。帰るまでがダンジョン探索だ」
「おう!」
俺たちは帰路を急ぐ。
帰り道もメリアのおかげで魔獣と出くわすことはなかった。
――そして俺たちは、無事アーカニアへと帰還したのだった。
◇◇◇
少し時は遡る。
クロードとシンシアがアーカニアに向かった頃。
グラルドルフに一つの人影があった。一見すると普通の女性に見えるが、その正体はウィルムス。
彼女は魔王の指示で、クロードたちを監視しにここにやってきたのだ。人混みに紛れながら、彼女はアルベイン家の屋敷を目指す。
(さて、これからどうしましょうか……)
彼女の変装は完璧だ。だが、アルベイン家の屋敷にはそう簡単には侵入できない。家の周りにはたくさんの警護兵がいるからだ。
(屋敷の中の人間に化けるのが一番手っ取り早いですかね……)
しかし、魔眼持ちのシンシアとクロードに出会ってしまうと変装がバレてしまう。二人にバレずにシエルと接触するのは極めて困難だ。
目標がであるシエルがいる別宅には、基本的にシンシアと、彼女が信頼した使用人しか入ることができないからだ。
――そこまでの情報を得ていたウィルムスの行動は慎重だった。
彼女は食材を搬入する商人になりすまし、シンシアとクロードの目を掻い潜り屋敷に潜入することにしたのだ。
そしてついにクロードとシンシアが
(このチャンスを逃すわけにはいきません)
彼女はここでも慎重だった。二人がどれくらいの期間屋敷を離れることになるか計算し、計画を練る。
(少なくとも二週間以上はかかるはず……)
【破魔の森】は中級者向けダンジョンだ。いくらシンシアが強いとはいえ、すぐに攻略することはできないはず。そもそも、攻略できるかも疑問なのだ。ダンジョンボスである【深淵の帰還者】の特殊なスキルは、シンシア一人ではどうしようもない。
そう、ここで彼女は致命的な計算ミスをした。
さらに、メリアというイレギュラーな仲間が増えることも予想できなかった。
二人の帰還は予想より遥かに早く、たったの一週間で【破魔の森】を攻略してしまった。
――そして、彼女がいよいよ行動を起こそうとしていた時、クロードとシンシアがグラルドルフに帰ってきたのだった……。
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