第14話 【二ノ型・嵐花蓮舞】
レネシス・ミルハートとの決闘から数日。
強くなっているという確かな手応えはあったが、破滅エンドを破壊するにはまだまだ力が足りない。なんせ、相手は魔王だ。
もっと強くなるために、改めてシンシアに稽古をお願いすると、「もちろんです!」と喜んで受けてくれた。
そして今。
訓練所でシンシアが剣を構えている。
「それでは見ていてください」
シンシアが目を閉じて集中する。練り上げられた魔力が【魔眼】を通さずとも視認できるほどに立ち上っていく。
「――【二ノ型・|
練り上げられた魔力を解放し、シンシアが目にも留まらぬ速さで駆け出す。
そのまま的に向かい、身体を大きく一回転させた斬撃を繰り出す。
その斬撃は、気流の渦を生み出し的を粉々に粉砕する。バラバラになった破片は気流と共に空高く舞い上がって、まるで粉雪のようにあたりに舞い落ちた。
「す、すげぇ……!」
「これが【二ノ型・嵐花蓮舞】です。身に纏った魔力を一気に解放し、気流を生み出しながら攻撃する、火力特化の技です」
「なるほど……」
風凪が始動技だとすると、嵐花蓮舞は
「この技を使うにはもっと魔力のコントロール精度を上げないとだな……」
「そうですね。一度全身に魔力を纏ってから、それを上半身に集中させる必要がありますから」
足に魔力を集中させるだけでも大変だったのに、全身にともなるとどれくらいの難易度になるか想像もつかない。
「ちょっとやってみるか……」
まず、慣れた感覚の足から魔力を集中する。……よし、これはかなり上手くできるようになってきた。
次に、その感覚のまま全身に魔力を纏うイメージ。……をしてみるが、練り上げられた魔力はそのままバラバラになって消えていってしまった。
「むずかしいな、これ」
「クロード、私と手を繋いでください」
「……え?」
「魔力を纏うイメージは身体を接触させると共有できるんです」
「なるほど……」
いつになくニコニコとしているシンシアと手を繋ぐ。
その瞬間、シンシアの魔力が俺の身体を通じて全身に駆け巡る。身体の中をまさぐられるような奇妙な感覚に思わず身体がブルっと震えてしまう。
「ちょ、姉さん……? くすぐったいんどけど」
「このまま、私の魔力をクロードの身体に纏わせます」
「うわっ!?」
身体の中を這いまわっていた魔力が一気に外へ放出され、そのまま全身を覆う。
……なるほど。これが魔力を纏うという感覚か。
よし。シンシアが間接的に魔力のコントロールを教えてくれたおかげで、かなり感覚が掴めた。
「ありがとう、姉さん」
「はい。クロードならすぐできるようになりますよ」
シンシアから手を離し、集中する。
魔力をより濃密に練り上げ、コントロールしやすくする。そして、それを身体の周りに薄く引き延ばすイメージ。
俺は魔力がそんなに多くないから、シンシアみたいにはできない。たぶん俺がやったらぶっ倒れるだろうな……。
「……よし!」
まだ完全に制御はできていないけど、魔力を纏うことには成功した。この感覚が掴めたら、あとはシンシアの動きを【模倣】するだけでいい。
「姉さん、お手本お願いできる?」
「はい。何度でもやりますよ」
「じゃあ、10回くらいお願い」
「分かりました」
シンシアが繰り出す技を【魔眼】を通し模倣する。何度見ても美しい技だ。何千回と繰り返し洗練されたシンシアの動きはまるで舞を見ているよう。
――この技をマスターできれば、俺はさらに強くなれる。そして、シエルを救って必ず破滅エンドをぶっ壊す。
◇◇◇
【二ノ型・嵐花蓮舞】の完成度を上げるため、俺は毎日魔力コントロールの練習とランニングを続けた。
最初は10kmだったランニングも、今では30kmまで距離が伸びた。常に魔力を全身に巡らせることで身体能力が向上し、息が上がることもなくなってきている。
「……ふぅ。魔力のコントロールもだいぶ上手くなってきたな」
「はい。私から見てもかなりのコントロール精度です。それに魔力の総量もかなり増えているようですね」
全力で魔力のコントロールを練習していたおかげか、男の俺でも魔力量がかなり増えているらしい。弱点だった魔力量も問題にならなくなってきた。
◇◇◇
そうして数日後。
ついに魔力コントロール精度が納得いくレベルになってきた。元々クロードには才能があったんだろう。すぐに上達することが出来た。
――俺は一人訓練場に立つ。
目を閉じ、集中。シンシアの真似だ。
魔力を練り上げ、体内に一度留める。そのまま、魔力を全身に巡らせていく。感覚が研ぎ澄まされ、思考がクリアになる。
そして、練り上げた魔力を無駄にしないように全身に纏う。チリチリ、と魔力と空気が擦れる音が聞こえる。
「――ふッ!」
俺は魔力を一気に解放し、駆け出す。魔力より活性化された思考、視界。
強化された全身を使い、踏み込み、剣を振りかぶる。
「……【二ノ型・嵐花蓮舞】ッ!」
魔力の奔流と、緻密にコントロールされた剣先が的を粉々に破壊し、巻き起こった気流がその破片を空高く舞上げる。
まるで小さい竜巻が起こったかのように、砂埃が渦となり、魔力の奔流をその目に分かりやすく伝えてくれる。
「……よしッ!」
シンシアに比べればまだまだかもしれないが、実用レベルには出来たかな。
「クロード……。すごいでしゅ……」
どこからともなく泣きじゃくったシンシアが現れる。……どこにいたの??
「ちょ、姉さん……? なんで泣いてるのさ」
「こんなにすぐに
……姉さんでも一ヶ月? マジか……。【模倣】があったとはいえ、クロードの才能は本物だな。
「……姉さん。改めてお願いがあるんだけど」
「……はい」
「俺と一緒に【破魔の森】を攻略して欲しい」
「もちろんです。私とクロードなら必ず……!」
「ああ。必ず攻略できる……!」
――シエル。あとちょっとだけ待っていてくれ。
俺が、絶対にシエルの
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