第7話 試験『ケイドロ』①
「じゃあ改めて作戦をおさらいするね」
試験当日。現在控え室にて私は皆と話していた。結局相手チームのアルカナの情報は得られなかったが、花音曰く魔法の使い方は私達と同じでほぼ初心者らしい。
「試験直前まで泥棒側か警察側か分からないらしいから、どっちになってもいい様に2パターン作戦を覚えて。まず泥棒側のパターンだけど……正直こっちはハズレの方。開始直後に蘭君と七星君チーム、高橋さんと花音と私のチームに別れる。空を飛べる蘭君と高橋さんを優先して生かす事。時間切れまで逃げ切ることが目的だから極力戦闘は回避して隠密行動。もし誰かが捕まっても基本的には助けなくていいけど、蘭君と高橋さんの2人が捕まったら助ける作戦にシフトする」
「ああ」
蘭君がリアンを指に嵌めながら返事をする。
「次に警察側の場合。泥棒側の時と変わらず同じ2チームで蘭君と高橋さんの2人が空から隠れてる人を探す。1人でも捕まえたら牢屋に私と花音が見張り、他の3人は1チームで捕まえにいく……こんな所だね。長くなっちゃったけど、皆覚えられた?」
「う、うん!大丈夫、徹夜で覚えたから!」
「僕も何とか大丈夫だと思います……」
「充分だ、むしろしっかり作戦立ててくれて助かる」
「右に同じく」
最後に花音の言葉を聞き終えた所でアナウンスが流れる。
『まもなく試験を開始します。控え室の生徒達は定位置にスタンバイしてくださーい』
「よし、じゃあ……勝ちに行こうか」
『あ、あーあー、聴こえてるー!?聴こえてたら手を振ってー!あ、三門ちゃんありがとー。聴こえてるみたいなので続けます。私は1年2組担任の
「なんか……変な先生だな」
「テンション高いね」
花音と話しながら赤城先生のルール説明を聴く。
『今回の試験内容は『ケイドロ』。制限時間は30分。ステージは『森林』となってまーす。勝利条件だけど警察側は時間内に相手を全員捕まえれば勝ち。泥棒側は時間切れまで1人でも逃げ切れば勝ち……もしくは警察側に支給するペンダントを全員分壊せば勝ちでーす!』
「え、新しいルール今追加するの……?」
「……」
急なルール追加には驚いたが今焦って作戦を変えても皆を混乱させるだけだ。どっちの陣営になるかも分かってない訳だし。
『今からややこしい話するからちゃんと聞いてねー。警察側にはさっき言った『ペンダント』と『手袋』を支給します。両方とも『"瞬間移動"の魔法』の力が込められて、ペンダントを破壊されるとその人は場外へテレポートしちゃいます。つまり、破壊される度に警察側は人数が減るので気をつけてくださーい。手袋は相手に触れるとその人を牢屋までテレポートさせます。』
パラパラと紙をめくるような音が聴こえる。これ先生も暗記してないんじゃ……?
『牢屋にはボタンがあってそれを押すと牢が開いて助けることが出来ます。その際、警察側は1分間場外にテレポートします。その間に泥棒側は隠れたりしてねー、そんな感じだねー……てなわけで陣営発表しまーす』
アドリブ力とか咄嗟の判断を試しているのだろうか。高橋さんと七星君が困った様にこちらを見ている。花音と蘭君は大丈夫そうだけど。
『1組が泥棒側、2組が警察側でーす!』
「え、えっと……泥棒側は……」
ハズレを引いたか……。頭にはてなマークを浮かべている高橋さんを横目に情報を整理する。
・制限時間は30分
・手袋で触れられると捕まる
・牢屋のボタンを押すと仲間を助けられて、相手を1分間行動出来なくさせる
・相手のペンダントを壊すと復帰不可能の場外、全員壊すか時間切れで私たちの勝ち
こんな所か、これ以上混乱させない為にも作戦は変えない方針でいこう。欲を言うと蘭君には余裕があればペンダントを壊してもらいたいが。
『それじゃあ頑張ってね!───────始め!』
「四葉」
花音の声に頷き、早速皆に作戦を伝える。
「焦らなくて大丈夫、相手も同じ状況な筈だから。作戦を伝えるね、基本的には何も変えなくて大丈夫。ただ蘭君は───────」
「"
「───────!」
……音が聞こえない!十中八九相手のアルカナだ。蘭君に目線を送り、2チームに別れ走り出す。もし敵に見つかった場合、空の飛べる高橋さんを優先して守る作戦だ。横で一緒に走る2人を見つめる。花音は大丈夫そうだが高橋さんはもう何が何だかという感じだ。どこかで状況整理がしたい。
「───────あ……聞こえた!」
音が聴こえる。時間制限があるのか、ある程度の範囲があるのかは分からないが今は置いておこう。
「な、何なのぉ……?訳分からないよ」
「またいつ聞こえなくなるか分からないから簡潔に話すよ、作戦は変えない。蘭君だけは余裕があったらペンダントを破壊してもらいたいって言いかけてたんだけど、伝わってるかは分かんない」
「了解、ほんとに捕まるって時になっちまったら私はペンダントの破壊を狙うぞ」
「分かった、そこら辺は任せるよ。高橋さんは機動力があるから危なくなったら私達を置いて飛んで逃げちゃっていいから」
「わ、分かった……」
私が上手いこと緊張を解いてあげれたらいいんだけど……うーん。なんとか頑張って言葉を探し高橋さんに伝える。
「大丈夫、負けても全員の責任だから。重く考えないで」
それを聞くと高橋さんは自分の頬を叩いた。
「……うん!大丈夫!」
「よし、もう少し見つかりにくい所に移動するぞ。どっちみち同じ所に長居するのは良くないだろうし」
「うん、そうだね。行こう」
……
東雲達と別れて少し経った。特に衝撃や大きな音も感じられない……最も相手のアルカナのせいで何も聴こえない訳だが。
「───────わ……あ、あれ、直った」
「音が聴こえるな、無音の範囲を抜けたか時間制限ってとこか。大丈夫か、七星」
「は、はい……多分」
「よし、別れる前に東雲が俺の名前を呼んでいたのを考えるに、多分俺にペンダントを破壊して欲しいって事を伝えたかったんだと思う。だから早めに相手の数を減らしたい。ランキングに入ってる2人……雲母と三門がアルカナ使いで間違いないだろうから他の3人、林檎、雨野、入月を隠れつつ探す……作戦はこんな感じだ」
「分かりま」
突然ズドンという音と共に近くの地面が木々ごとえぐれた。
「……っ!」
七星を咄嗟に担ぎ、浮遊しながら素早く移動する。
「あー居た居た、探したわ。面倒臭いからお前ら、そこ動くな」
地面に七星を下ろし、上空から聞こえる声に問いかける。
「雲母彼方……か。お前1人か?」
周りに他の人の気配は感じられない……となると東雲達の方に他の4人が行ったと見るべきか。とりあえず七星にこの場を離れるように伝える。
「おい、動くなって言ってんだぜ?」
「七星、俺を生かすのを優先するって作戦だったと思うがあいつは話が別だ。お前がここにいても役に立てない。ここから離れろ」
「わ、分かりました……うわぁ!」
七星の返事を聞くと同時に俺のアルカナで七星を飛ばした。少し乱暴なやり方になったが仕方ない。
「おい……無視してんじゃねぇぞ……」
「キレんなよ、今から話聞いてやるから」
「クソ雑魚が……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます