第6話 作戦会議②

 試験まで残り1週間となった今日、私は小豆沢先輩に呼ばれ生徒会室へ来ていた。約束の件で呼ばれたのだろう。ノックをしてドアを開ける。


「失礼します」


「お、四葉ちゃんおつかれ〜。どう?試験の調子は」


 中に入ると小豆沢先輩1人だった。特に気にする素振りを見せずに質問に答える。


「対戦相手にランキング入りしている生徒が2人いて、かなり強敵らしいです。小豆沢先輩に言われていた『目標』については正直まだ見つけられていません」


「そかそか。ま、ウチが言ったことやしあんまり気にせんといて。……それじゃ、約束通り"雷"の魔法の使い方、教えよか」


「はい、よろしくお願いします」


 適当に座ってと言われ椅子にかける。


「大層に教えるとは言ったけど、正直過去の先輩達もそんなに変わったことはしてないんよね。前に四葉ちゃんが『雷を放出する』って言ってたけど結局やってる事はそれと同じで『放出する雷をバラけさせないために球体にして打つ』とか『ブレードみたいな形状にして切る』とか『相手の体に触れてバチバチ〜』とか。こんなとこかな〜ウチが覚えてるのは」


「なるほど……形を変える、みたいな感じですか」


「そやね、"雷"の魔法に限らず例えば"防御"の魔法とかさ、魔法使い初めの子達ってとりあえず体全体を覆うように使うことが多いんやけど、耐久力はあんまり無いしマナの消費は多いしで賢い使い方では無いやん?ある程度ここに攻撃が来るって分かってたらもう少し小さくするとか、そういう『形』を変えるってのは意識しておいた方ええかもね」


 リアンが指輪の形をしているから『魔法は手から出すもの』って勝手に考えていた。もう少し……柔軟に考えないとだな。


「それと、人によっては魔法を組み合わせたりすることもあるで」


「組み合わせる?」


「"水"の魔法と"雷"の魔法を組み合わせるとどうなるか、なんとなく分かるやろ?」


「感電的な事ですね」


「そそ……ま、こんなとこかな。お役に立てた?」


「はい、かなり……やってみたいことも出来ました。ありがとうございました」


「試験当日やけど、ウチも体育館の客席で見てるから。楽しみにしてるで」


 またね〜と最後に言われ生徒会室を後にする。残りの1週間は教えて貰ったことを試してみよう。




 ……




「1組の奴が嗅ぎ回ってるらしいな。俺か三門のアルカナを知りたいんだろうが……大変だな、一々調べ回らないと作戦すら立てられねぇ」


「あ、あのー雲母さん。俺達は作戦とか要らないんでしょうか?」


「お前らアルカナも使えない雑魚は黙って俺の言う事聞いてりゃいい。何か間違ってるか?」


「い、いえ……」


「あんたもっと優しい言い方出来ないの?アルカナ使えるからってそんな言い方されて私らが何でも言う事聞くと思ったら大間違いよ」


「し、志保ちゃん……やめようよ」


「直葉もハッキリ口にしないと!こんな奴の言うこと聞きたいの!?」


「元からお前らは戦力として数えてねぇよ。三門が少し役に立つくらいだな」


「っ……!」


 聞いていられなくなり私は口を開いた。


「雲母君さ、流石に相手の事舐めすぎじゃない?相手もアルカナ使いが2人居てそのうち1人はあの会長に勝ったんだよ?」


「勝った?お前、あの試合ちゃんと見たか?誰が見たって東雲の勝ちには見えなかっただろ。まぁ会長とやらもアルカナを使わなかった所を見るに手を抜いてたんだろ、それでも大したことなさそうだったが」


「"治癒"のアルカナだけであそこまでやれたのはすごいと思うけど」


「東雲のアルカナは戦闘では無力、警戒すんのは蘭くらいだろ。魔法とアルカナじゃ天と地の差があるんだよ。お前も分かってんだろ、三門」


「さぁ、どうだろうね」


「……まぁいい、とにかく試験なんざ何もしなくても勝手に勝つ。こんなお遊び俺にとっては踏み台に過ぎないんだよ。足だけは引っ張るなよ、お前ら。」


 そう言って雲母君は教室を出ていった。何なのよ全く!という入月ちゃんの声を聞きながら私は目を瞑る。東雲ちゃんと戦える……ずっと楽しみにしていた。雲母君は東雲ちゃんに魅力を感じて居ないみたいだけど、きっと本番に何か驚くような事をしてくれると期待してしまう。






 そして……時は経ち、






 今、試験の幕が上がる。

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