第5話 作戦会議①

 小豆沢先輩への相談から1週間程経った頃。朝教室に行くと黒板に自分達の隊と対戦する相手の隊が貼りだされていた。相手は1年2組。このタイミングで自分達だけではなく相手も分かるんだな。対策を取るのも実戦へ向けて必要ということか。えっと東雲、東雲……。


「あ、合ったぞ。えっと……四葉、私と一緒だ」


 自分の名前を探し出す前に花音が見つけたようだ。


「ある程度、交友関係とか含めて選ばれてるのかもね。ほかの3人は……」


 紙に書かれていたのは、東雲四葉、柊花音、蘭隼人、高橋桃、七星瑠衣ななほしるいの5名。高橋さんは授業の時に空中から落ちた人で、七星……っていう人は覚えてないな。そして……


「蘭、か。これかなりラッキーじゃないか?クラスの中で私達の隊だけがアルカナ使える2人いるわけだろ」


「どうだろ」


 もっとアルカナ使える人はバラけるのかと思っていたのだが、同じなのか。しかしそうなるとバランス的に相手だって同じ事が起きてそうなものだが。

 相手の名前に目を向けると、雲母彼方きららかなた林檎直葉りんごすぐは雨野大成あめのたいせい入月志保いりづきしほ、三門怜美の5名。三門怜美……?あれどこかで聞いた様な……。


『私、三門怜美。よく苗字の最後と合わせてドレミって呼ばれてます。えへへ』


「そうだ!ドレミさんだ」


「え?急に何……対戦相手に知り合いでも居たのか?」


「うん、三門怜美って人。知り合いっていうか1回話しただけなんだけど」


 そう言うと花音はスマホをポチポチといじり出す。


「三門、三門……居た!コイツ序列6位〈シックス〉だぞ!?それにこの雲母ってやつは序列3位〈サード〉あー……頭痛くなってきた」


 なるほど、ドレミさんってランキングに居たのか。それで急に話しかけてきたのかな。そしてやはり相手の隊も強いらしい。


「どうするか、私達」


「とりあえず対策の為にも1度集まった方がいいと思う。あとは試験前に相手の情報が欲しいかな。私のアルカナとか余裕でバレてるだろうし」


「分かった、なら今日の放課後に1度集まろう。それまでに出来るだけ相手の情報集めてみる」


「じゃあ私は同じ隊の皆に声かけとくよ」


 花音は了解と言うと1年2組へと向かって行った。






「えー……それでは試験に向けて作戦会議を行いたいと思います」


 放課後になり無事5人集める事が出来た。正直少しは苦戦するかなとも思っていたのだが全員二つ返事で来てくれた。とても助かる。

 お前が仕切ってくれ……という花音からのお願いにより、私が他の4人に向けて言葉を投げかけた。


「とりあえず、誰が何を出来るかを知りたいな。1人ずつ得意な事とか教えて貰っていい?」


「じゃあ……私から」


 花音が手を上げる。


「私はマナの量が多い、それもかなり。先生曰く『初めて見るレベル』らしい。魔法は『防御』と『炎』が使いやすかったって感じだな」


 続いて、下を向きながらはいと手を上げたのは七星君。第一印象としては少し大人しそうな男子。


「ぼ、僕は……正直得意な事とかは無いです。魔法は『磁力』の練習を1番多くしてました。以上です……」


 ノートにそれぞれのメモを取ってくれている花音を確認しながら、次に高橋さんを指名した。


「私も特にすごいって言えるようなことは無いかな……。『風』の魔法を頑張ってるんだけどまだ上手く使えなくて、空中飛べたら色々使えそうかなって思ってるんだけどね」


「ある程度コツみたいな事は後で教える。高橋さえよければだけど」


「え?う、うん。分かった……?」


 突然、蘭君に話しかけられびっくりしながらも高橋さんは答える。作戦会議に誘った時も思ったけど意外と普通なんだよね、蘭君。一人でいるのが好きっぽいんだけど。でも教えるって事は魔法も得意なんだろうか……などと考えていると蘭君が手を上げた。


「どうせ試験中にバレるだろうから言うけど、俺は『風』のアルカナを使える。まぁ色々出来るけど……飛べたり、竜巻起こせたりって感じかな。魔法についてはお前らと同じレベルだと思ってくれていい。『防御』の魔法くらいかな、使うことになりそうな魔法は」


 なるほど『風』のアルカナ使いだから教えることが出来るのか。それにしても竜巻か……やっぱりアルカナって魔法とレベルが違うんだな。


「だから飛ぶコツとか教えられるんだね!良かったー……皆で仲良くやれそうで」


「悪いけど、馴れ合うつもりは無い。試験の為に俺は協力してるだけ、当然手は抜かない。それじゃダメか?」


 そう言って蘭君は私の方を向く。


「ううん、それでいいよ。別に仲良しこよしでやろうって話じゃないから。ちゃんと試験に協力してくれるならそれで」


 そ、そっかー……と高橋さんは少し悲しそうな顔をしていたが十分だ。


「じゃあ最後に私。私は『治癒』のアルカナが使える。一応……どんな怪我でも一瞬で治せる自信がある。あと生物だけじゃないものを『再生』出来る。割れた窓ガラスを元通りにする……みたいな。魔法は『雷』の魔法を主に研究中、かな」


「どんな怪我でも……か。根拠はあるのか?」


 蘭君が疑問に思ったらしい。


「過去に胸を貫かれて死にかけた時があって、その時に自分自身を一瞬で『治癒』した事があるのと、一時期病院で働いてた時があって、その時に色んな人の外傷を『治癒』した、それこそ何百人の数。これじゃダメかな」


 1年前、入院してた時期に病院やなんかよく分からない偉い人、果てには獅子の牙ダンデライオンの人に少しの間でもいいから手伝って欲しいと言われて手伝っていた。お金も必要だったし、何より一人の時間が嫌だった私には……かなり助かった。


「いや、十分だ。悪かった」


 そう言うと蘭君に頭を下げられる。気にしないでと笑って返した。多分根が良い人なんだろうな、この人。

 隣にいる花音も少し同情するような顔をしていたが、気付かないふりをして会議を進める。


「次に、一応隊のリーダーを決めておきたいんだけど……誰がいいかな」


 花音にも事前に聞いてみたがアルカナ使えるお前か蘭だろと言われた。ならランキング的に見ても蘭君かなと思ったわけなのだが。


「俺はそういうの得意じゃないから、東雲でいいと思う。今だって仕切ってるわけだし」


「うん、私も賛成」


「と、特に異論は無いです……」


 私も別に指揮とかは経験無いんだけど……皆がいいならいいかと納得する。


「決まりだな」


「分かった。やれるだけやってみるよ」

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