第4話 魔法の授業②
「よし全員集まったな。とりあえずそうだな……
竜胆先生がそう言うと少しだけクラスの皆が騒がしくなる。蘭と呼ばれた男子生徒が前に出て行く姿を眺めながら隣にいる花音に小声で質問する。
「あの人、知ってる?」
「お前……この前ランキング見ただろ?このクラスのもう1人のアルカナ使い、
そう言われるとそんな名前もあった気がする。
「じゃあこの指輪……リアンを指に
「分かりました」
蘭はリアンを
「よし、もういいぞ。大体平均値くらいか。皆も見えたと思うが今行ったのはマナの量を
なるほど、そんなものもあるのか。記録用紙を書いている先生の姿を見ながら自分の番を待つ。
「次、柊」
「は、はい」
前に並ぶ花音の番になる。ここまで見てきたが大体広げた掌の2倍くらいの大きさが平均といった感じだった。
「……うわっ!」
「……驚いたな、私も初めて見るレベルの大きさだ」
花音の掌から出た球体は上半身を超えるほどの大きさ。先生がどのくらいの数のマナを見てきたかは分からないが驚いてるのを見るにかなり凄いんだろう。
「次、東雲」
「はい」
リアンを手渡され指に
「よし……。もういいぞ」
「……ふぅ」
私の掌から出た球体は平均より少し大きいくらいだった。まぁ悪くは無い量なのかな……。
それから少しして全員のマナ計測が終わり、実際に魔法を使ってみる事になった。自分に合う魔法を探してくれとの事で前に置かれたリアンを手に取る。『雷』『風』『磁力』『防御』等たくさんある。あ、小豆沢先輩の使ってた『炎』もあるな。
昨日のランクマッチの内容を思い出す。私に1番必要だと思うのはまず攻撃力だ。となるとすぐに頭に思いつくのは『炎』とかそういう属性系だ。
「わっ!痛っ……!」
「高橋、大丈夫か!?」
何事だとみんなの目線の先を見ると、さっきまで少し遠くで空中を浮いていた女子生徒が居ない。落ちてしまったようだった。そこまで高くは無かったから大丈夫だとは思うけど腕を痛そうにしている。私も行こう。
「折れたりはしてないか?」
「わ、分かんないですけど大丈夫だと思います……え?し、東雲さん?」
「"
彼女の腕に触れ、傷を治す。
「す、すごい……痛みが消えた」
「気をつけるんだぞ、東雲もありがとうな」
そう言って他の生徒に呼ばれた先生は行ってしまった。高橋と呼ばれていた彼女に話しかける。
「大丈夫?えっと……高橋さん?」
「高橋、
「私ってそんなに怖がられてるの……?」
「だ、だって入学初日から生徒会長を煽って、喧嘩売ってしかも勝っちゃったんだよ。てっきり誰彼構わずボコボコにするのかと……」
話の尾ひれがすごい、私に煽った覚えは無い。
「あ、ちょっと聞きたいことがあってさ、さっき飛んでたけど何の魔法?『浮遊』なんて無かったんだけど」
「えっとね、これ。『風』の魔法」
高橋さんは指に嵌めたリアンを見せる。どうりで探しても無いわけだ。なるほど、使い方で色々変わるんだな……。
「ん、分かった、ありがとう。知りたいこと知れたよ」
「いやいや、こっちこそありがとうね東雲さん」
そう言うとぺこりとお辞儀をして離れていった。んー……とりあえず色々試してみるか。
「よーし、今日はここまで。少しでも痛みや違和感がある者は教室に戻る前に私に教えてくれ、以上解散!」
チャイムの音と共に解散となる。周りを見渡すと色々試したせいか汗をかき、息切れしている者も多かった。私も少し疲れた。
「四葉、教室戻るぞ」
「花音は元気そうだね、やっぱりマナが多いんだ」
「そう言われると全然疲れてはないな。とにかく、教室行くぞ……っておいくっつくなよ!ち、近いから!」
「教室まで連れてってー……」
花音に引きずられながら考える。個人的には『雷』の魔法が好みだった。手から雷を放出するくらいしか考えつかなかったが、何かこう、別の使い方もしたい。『風』の魔法で浮遊するみたいな。応用する感じで……うーん、難しいな。
試験までに何か見つけたい所なのだが、上手く思いつかない。先生に相談でもしようかな、それか魔法の使い方が上手い人。となると上級生……あ。
「なるほど、それで会長に相談しに来たんですね。いつも通りならあと10分くらいで来ると思います。座って待っていてください」
放課後、アポ無しで生徒会室まで来た私を副会長の柳生先輩は優しく迎え入れてくれた。なにか作業をしていた様で小豆沢先輩が来るまで書き物をしている柳生先輩の横顔を眺める。相変わらず無表情だけど綺麗な人。
「あの、何か?」
「あ、ごめんなさい。綺麗な人だなと思って」
「……!」
無表情のまま柳生先輩は立ち上がり生徒会室の奥へと行ってしまった。変なこと言っちゃったかな、褒め言葉のつもりだったんだけど……と何かを持って帰ってきた。
「紅茶とお茶菓子、苦手な物はありますか?」
「え?いや、無いです……?」
「良かったです、温かいうちにどうぞ」
紅茶を入れてくれた後、柳生先輩は耳に髪をかけ作業を再開する。嬉しかったのかな……。
「やっほー!諸君元気にしているかな……ってあれ、さっちゃんと四葉ちゃん!え?何何!生徒会入ってくれるん?」
勢いよく開かれたドアの音と共に小豆沢先輩が入ってきた。
「会長遅いです、こんな可愛い子をあまり待たせないでください」
「え……?いやウチ知らんかったんよ?無理言わんといて……?」
「それで、ウチに何を聞きたいのかな?」
なんだか嬉しそうに小豆沢先輩は話す。頼られて嬉しそうですねと柳生先輩が小さな声で言葉を漏らす。
「えっと……魔法について聞きたいことがありまして」
「うん」
「昨日、小豆沢先輩と戦ってみて私には攻撃の手段が足りないと思いました。なので色々魔法を試してみて『雷』の魔法が私の中で1番好みでした。でも手から雷を放出する事くらいしか思いつかなくて……。なにか意見をお聞きしたいな思いまして」
「なるほどな〜。じゃあまず四葉ちゃんは『雷』の魔法をどういう感じに使いたいん?出来る出来ないは置いといて、理想を教えて欲しいなぁ」
「え?そうですね……」
どういう感じに使いたいか、そうだな……
「ちょっと子供っぽいかもしれませんけど……もしかしたら私は超スピードで動けるんじゃないかと思いました。体が持たないレベルの速さではなくとも十二分に攻撃として使えるかなと思いまして」
「うん、いいやん。じゃあそれを目標にしよか。『超スピードを出す為の方法を探すこと』」
「方法を探す……ですか」
「多分四葉ちゃんは、ウチも含めて『先輩達は"雷"の魔法を使ってどんな事をして来たか』ってのが知りたいんやろ?だから今すぐにそれを教えてもええんやけど……それを聞いて満足するより、『四葉ちゃんの理想を叶える方法を探す事』を先にやってみいひん?それが出来ても出来なくても知りたい事はウチが試験の前に余裕を持って教えてあげるから、どう?」
「その『超スピードを出す』ということを実現出来た人は過去に居なかったということですか?」
「うん、過去に1人もおらんよ」
「……そう、なんですね。分かりました、試験が近付いてきたらまた来ます」
「うん、安心して!ちゃんとその時に知りたい事は教えてあげるから」
分かりましたと1度お辞儀をし生徒会室を出た。扉が閉まる直前、柳生先輩が手を振っているのが見えた。紅茶美味しかったな。
超スピードの出し方……か、色々試してみるしかないな。もしダメでも先輩達が『雷』の魔法をどう使っているのかは教えて貰えるみたいだし。
……
「別に教えてあげても良かったのでは?」
四葉さんが居なくなった後、会長に質問を投げ掛ける。
「昨日戦ってみて、四葉ちゃんって能力の使い方が上手いなって思ったんよ。こう……発想力って言うの?だからどうしても期待してしまうんよ、もしかしたらまだ誰も出来たことの無い新しい魔法の使い方を見つけられるんやないかなって」
「なるほど、でも1つ嘘をつきましたね、会長」
「んー?何の事ー?」
本当は自分で分かってるくせに、会長は私の次の言葉を待つ。
「『超スピードを出す』事を実現出来た人間は過去に一人もいない……って言ってましたよ」
そう言うと待ってましたと言わんばかりにニヤニヤしながら会長は話した。
「おらんよ。魔法では、な」
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