【姉児相】2話 甥っ子のルーティン


甥っ子が歩行器を使い、壁を伝い、箸を使い、今や赤ん坊から小人サイズまで成長した。

甥っ子は私の『生理的に無理』な見た目に当てはまらないだけでなく、性格までも子供嫌いな私が、自ら擦り寄ってしまう程の可愛さなのである。


姉の横暴さをこれから暴露する上で、まずは甥っ子の性格を知ってもらうことはとても重要である。

というのも、姉の横暴さ故、今の甥っ子の性格が生まれたと言えるかもしれない。



言葉も理解できない赤ん坊の頃から、姉の声の大きさや歩く音、ドアを閉める音に反応を示していた。言葉を理解し出してからはというと、その反応は顕著に表れる。

そして段々と、甥っ子の行動は全て許可制となっていった。

おもちゃで遊びたい時はまず姉に『あのおもちゃで遊んでもいいか』確認するのだ。姉の許しが出た場合は、ようやくおもちゃを触り、遊び始める。

他にもある。私が甥っ子にお菓子を食べるかと勧めると、まず姉の元へ行き『あのお菓子を食べても良いか』確認するのだ。

おもちゃの時と全く同じではないかと思った人もいるだろう。こんな事ばかりである。

しかし甥っ子の言動は本当に素直で可愛らしいのだ。

誰かが自分の為にいてくれたことを見つけるプロである。見つけた後はすかさず「してくれてありがとう」と言いにくるのだ。

姉が私や母に言ったことのない感謝を、甥っ子は見てもいないのにできるのだ。


そして、6歳になった今現在の甥っ子の一週間ルーティンはこうだ。

月曜日から金曜日は朝8時過ぎに姉と家を出発し、保育園へ向かう。帰宅するのは18時半から19時頃。

帰宅後まずは保育園で汚れた靴下と一緒に風呂場へ行き、一人でシャワーを済ませ靴下を洗う。夜ご飯はお惣菜の日もあれば、のんびり姉が作る日もある。

姉が洗い物をし終えるまでに、使った食器を持っていく。もし間に合わなければ、明日の夜まで洗って貰えないからだ。

平日は基本的にテレビ禁止である。勿論朝も禁止。理由は、テレビを見ると甥っ子は食べる事を忘れるからだ。

テレビの許可が出るのは、金曜日の夜と土曜日の朝晩、日曜日の夕方までだ。


平日の甥っ子が、寝るまでに残された時間は1時間、あるかないかだ。

この貴重な時間に甥っ子は、iPadを触る。YouTubeでゲーム実況動画を見た後は、干された自分の服を畳み、明日着る制服を用意する。21時30分までに寝ることが出来ればいい一日だ。

土曜日はというと、朝から運動の習い事へ姉と出かける。

その後は姉がエステ、美容院、ネイル、もしくはまつ毛パーマのどれかが予定として入る。甥っ子がお店に着いていけるのは、エステと美容院だ。

それ以外は家に一人でiPadかSwitchがお友達となる。土曜日は姉とうんと夜更かしをし、日曜日は姉の気分で予定があったりなかったりだ。



書き出してみると甥っ子は、独身アラサーの私よりハードな日々を送っている。

甥っ子の自由な時間は、社会人の私よりも少ない。


今現在の甥っ子は、癇癪を起すことや突然泣き喚く等していないが、子供ならではの自由な時間が本当に少ないのだ。

姉の監視下に置ける日々は、言わば刑務所とも言える。



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姉を児相に突き出すまで 姉の妹 @anejisou

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